女の声に混じる男の声 千変万化の「歌姫」中村中
私を抱いてください
2007年12月5日発売/3800円/AVCD-23382/B(DVD付)
avex trax
姿形は男(女)としての性別を持ちながら、心の性はその反対の女(男)という性同一性障害(トランスジェンダー)は、最近になってカミングアウトする人も多く、メディアにも数多く登場してきている。世田谷区議会の上川あや区議などは、その最たるものだろう。
性同一性障害であることを2006年9月にオフィシャルサイトでカミングアウトした中村中(あたる)。いまでこそ、中村のサイトには、そのことに触れる記述は見当たらないのだが、同じ年の6月にavex traxからシングル「汚れた下着」でメジャーデビューしたばかりで、その衝撃は、大きかった。
現在22歳の中村 中は、中学時代から作詞・作曲、路上ライブと、具体的な音楽活動を始めたという。高校を中退し19歳のときに出場した「かつしかバンドフェスティバル」でグランプリを獲得、YAMAHAのコンテストなどにも出場、当初はヤマハに所属しながらインディーズでの活動を続けていたが、前述したとおり、06年にavexからメジャーデビューを飾り、それ以降は今日に至るまでにシングルを6枚、表題のアルバムを含め2枚のアルバムを発表と、かなりのスピードで音楽シーンを駆け抜けている。
中村 中の音楽は今風ではない。1stアルバム『天までとどけ』(AVCD-23109 07年1月 RELEASE)同様、J-POP的なサウンドを聴かせながらも、昭和の匂いを感じさせる。具体的に言えば、昭和の歌姫・ちあきなおみを彷彿とさせる。歌にドラマがあるのだ。歌うのと同時に演じている。この才能は稀有だ。
アルバムに収録された11曲の内、「部屋の片隅」(3rdシングル収録)、「りんご売り」(5thシングル収録)、「裸電球」、「真夜中のシンデレラ」(6thシングル収録)と、すでに耳にした曲もあるが、残りの7曲は新曲。デビュー以前に100曲を越えるストックがあったというから、その時代の曲かもしれないが、それはわからない。
中村 中の声は千変万化。確かに女性の声なのだが、時として男の声も聴こえる。CDを聴けば、不可思議で魅力的な世界がたち現れることだけは、確かだ。
【私を抱いて下さい 収録曲】
1. 部屋の片隅 ~Album version~
2. リンゴ売り
3. 鳥の群れ
4. あたしを嘲笑ってヨ
5. AM零時
6. 真夜中のシンデレラ
7. ロック・バンド
8. やりきれない日々
9. 私が欲しいなら
10. 雨のロマンス
11. 裸電球 ~Album version~