「従来のアプローチを覆すような印象がある」との評価
発表会では、実際に「kikippa」を使って音声を流した。
流れている映像の音声を40ヘルツに変調すると、普通の音声に常にノイズが入っているように聞こえる。武田氏によると「スタッフも患者も、はじめは違和感」があったが、1週間ほどで順応し、自然と受け入れられるようになったという。
認知症フロアに入所する患者の家族は、kikippaを導入した後の様子について、「会うたびに元々の状態に近くなってきたと感じます」と話した。
「よく話すようになった。明るくなった。あれが欲しい、これが欲しいという要望も言ってくれてうれしい。何も言ってもらえないのは、寂しいです」
作業療法士として働くスタッフも、患者の帰宅願望や徘徊が減ったと語る。
「認知症の症状の改善は、膨大な時間とマンパワーを要する印象があるのですが、マンパワーを割くことなく、スピーカーを置いて流しておくだけで改善したので、従来のアプローチを覆すような印象が持ちました」
別のスタッフの話では、患者らが食堂に集まる時間が長くなった印象を受けているという。例えば体操が始まると、以前は体操が苦手な患者は部屋から出て行っていたが、最近では参加率が上がっているとの話だった。