100人以上の犠牲者
戦後の日本では、1970年代半ばごろまで、学生運動が社会に大きな影響を与え続けた。関連する映画作品もいくつか作られている。
1960年に公開された大島渚監督の「日本の夜と霧」は50年代の学生運動がベースなっている。大島監督自身、京都大学時代は京都府学連委員長として学生運動に関わっていた。映画公開時は、安保闘争が激化していたこともあり、作品は上映4日目にして打ち切りに。大島監督はこの上映中止に抗議し、松竹を退社した。そのことでも映画史に残る作品となった。
60年代後半以降の学生運動を扱ったものでは、代島監督の「きみが死んだあとで」(2021年公開)が圧倒的なリアリティを持つ。1967年、第一次羽田事件で亡くなった京都大文学部1回生、山崎博昭さん(当時18歳)を主人公にしたドキュメンタリー作品だ。
作家の三田誠広さんや詩人の佐々木幹郎さんら高校・大学の同級生、元東大全共闘議長の山本義隆さんなど当時の活動家が多数登場し、山崎さんの死が同時代の学生や学生運動に与えた衝撃を証言する。3時間20分という超長編だが、まったく長さを感じさせない濃密な作品だ。
このほか、小川紳介監督の「圧殺の森――高崎経済大学闘争の記録――」、日大全共闘映画班製作の「日大闘争の記録」、さらには、「三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実」などのドキュメンタリーも話題になった。劇場公開の実写作品では第82回キネマ旬報ベスト・テン 日本映画第3位になった「実録・連合赤軍 あさま山荘への道程」(若松孝二監督)がある。
学生運動は、全共闘運動の終焉と、72年の連合赤軍事件で急速に低調になって一般学生は離反。逆に、過激派セクト間の内ゲバが激化していく。
全共闘運動や連合赤軍に関しては関係者の証言などが多数残されているが、100人以上の犠牲者が出たとされる内ゲバ事件ついては、資料が少ない。したがって、今回の「ゲバルトの杜 彼は早稲田で死んだ」のように、「内ゲバ」を扱った映画作品は極めて珍しい。
映画は5月25日、東京・渋谷のユーロスペースで公開される。