「新製品のテストマーケティング」にも
現在、日本のクラファンは、目標金額を達成することが大前提としてあるとしても、それだけが目的ではなく、ビジネスの手段のひとつとして活用されています。会社名も知られてないスタートアップにとっては資金調達だけでなく、プロモーションの役割が重要です。「新製品が出ます」という情報だけで、注目を集めたり、メディアが取り上げてくれたりすることは、まずありません。
この製品でこれだけのお金を集めたということが、ある意味で話題の広がりを担保してくれる形となっているわけです。さらに、自分たちの製品がどう受け止められるのかを知ることで、製品やサービスの改善点を見出し、ブラッシュアップしていくことができるのです。
大企業にとっても、クラファンは「新製品のテストマーケティング」の場として重宝されています。いわゆる市場調査よりももっと消費者に近いところで、その反応を探ることができ、成功次第ではありますがより効率的です。もちろん話題性の高いプロジェクトは、メディアに取り上げられる機会も増え、通常の製品よりも広告宣伝効果も期待できます。
ただし、クラファンで成功を収めるのは容易ではありません。プロジェクト主催者は、社内外で幾度となく体験会を開催し、潜在顧客の声に耳を傾ける必要があります。支援者とのコミュニケーションを通じて信頼関係を構築し、プロジェクトへの理解と共感を深めていくことが肝要です。
例えば、ViXion01の場合でいうとクラファンをスタートさせる前の時点で、直接連絡が取れる人たち限定ではありましたが、20人規模の体験会を2回実施しています。そこで得られた知見をクラファン開始時のウェブサイトに反映させました。このおかげで、その新規性がゆえにわかりにくい部分もあった製品が、理解されやすくなりました。
SNSの活用も欠かせません。プロジェクトの進捗を定期的に発信し、支援者の期待に応えることが重要です。双方向のコミュニケーションを重ね、プロジェクトの魅力を広く伝えることで、新たな支援者の獲得にもつながります。
ViXion01では、二子玉川にある蔦屋家電+での展示をクラファンスタートの初日から実施していました。そして、その初日に目に問題を抱えた息子さんがいる親子連れが訪問してくれました。そこで交わされた感動的な言葉は、対応した店員からそのままViXion側に伝えられ、体験者の声として取り上げることができました。こういった製品に対する生きた言葉が波のように広がっていき、スタートダッシュの要因の1つとなりました。
1億円以上の資金調達を達成すれば、メディアに取り上げられる機会も格段に増えるでしょう。新聞やテレビ、雑誌など、様々なメディアに露出することで、プロジェクトの知名度は飛躍的に向上します。メディア露出は、プロジェクトの信頼性を高め、事業の成長を加速させる原動力となるのです。
日本のクラファン市場は、独自の進化を遂げながら、スタートアップや大企業のビジネスツールとして確立しつつあります。綿密な準備と支援者との緊密なコミュニケーションが、クラファン成功の鍵を握ります。実際、クラファンの募集期間が終わった途端にユーザーとのコミュニケーションをすっかりやめてしまう事例というのはけっこう見かけるのです。
当初、日本のモノづくりに新風を吹き込む存在として、発展が期待されたクラファン。一過性のものではなく、十分根づいた感があります。
つまり、クラファンで成功して終わりではなく、ある意味「クラファンで成功する」を前提として、自分たちのビジネスのロードマップの中にどう組み込んでいくかが求められています。