オリーブオイルが2024年5月から値上げになる。大手メーカーは22年から4回目の値上げだ。主産地のスペインなど地中海沿岸地方で干ばつが続き、オリーブが不作になっていることが原因だという。今回は値上げ幅が大きいので、多方面に影響が出そうだ。
業務用は6~8割の値上げ
日清オイリオグループは2月28日、家庭用オリーブオイル22品を5月1日納品分から値上げすると発表した。時事通信によると、取引先への販売価格を23~64%引き上げる。業務用オリーブオイル8品も6~8割値上げする。
小麦粉や食用油の製造販売大手、昭和産業も2月29日、家庭用と業務用のオリーブオイルを5月1日納品分から1キロあたり950円以上値上げすると発表した。
値上げの理由として、両社ともオリーブ主産地の欧州で、熱波や干ばつにより記録的な不作となっていることを挙げている。
前回、23年10月の値上げの場合、日清オイリオグループは販売価格で10~26%の値上げ。昭和産業は、納品価格で1キロあたり320円以上値上げだった。この時と比べると、今回は値上げ幅が大きい。
家庭用は5割アップ
「いつも使っているオリーブオイルが最近、大幅に値上がりしたのでびっくりしていたら、また値上げですか・・・」
東京都板橋区の主婦(66)はため息をつく。家庭用のオリーブオイルとして人気がある日清オイリオグループの「BOSCOエキストラバージンオリーブオイル」(456グラム)は、50%の値上げが予定されている。
業務用オリーブオイルは「6~8割の値上げ」というから、尋常ではない。イタリアンレストランなどでは値上げを強いられるところも出てきそうだ。外食レストランのサイゼリヤでは、店内で「エクストラ・バージン・オリーブオイル」(500ミリリットル)を販売しているが、すでに2月21日、850円から1200円に値上げしている。日経新聞によると、仕入れコストの高騰などによるという。
この2年ほど国内では食品の値上げが続いているが、今回のオリーブオイルの上げ幅は、群を抜いている。横浜税関によると、日本のオリーブオイルの輸入量は、1988 年と2022 年を比較すると、数量で20.7倍、金額で36.9倍に増えている。オリーブオイルを使う食生活は、すでに日本人にも定着しているだけに、今回の大幅値上げの影響は大きい。
やがて「超高級品」に?
オリーブオイルの値上げには、いくつもの理由があるという。国際政治学者の六辻彰二さんは2023年12月16日、「Yahoo!―個人」で、「オリーブオイルが超高級品になる日――価格高騰が長期化しかねない4つの理由」と題して詳しく解説している。
一つは天候不順。産地の地中海沿岸は、地球温暖化の影響をもろに受け、毎年のように熱波となっている。オリーブの不作が続き、最大の産地スペインは生産量がほぼ半減している。当然ながら、自国でも価格が高騰している。
一方で、健康志向も相まって、消費は世界的に拡大している。生産・供給と消費のアンバランスがひどくなっている。しかも、トルコ(世界第二位の生産国)のように、輸出を制限する国も出ている。シリアやモロッコも輸出制限に踏み切っている。新興国・途上国の動向が、先進国を揺るがす構図となっている。
さらに大きな問題は、生産量を簡単に増やせないこと。オリーブ栽培は地中海性気候の土地でなければ難しい。実際、生産量上位10か国は地中海沿岸国が占め、その生産量の合計は世界全体の9割以上を占めている。生産を無制限に増やせば、生産地の自然環境や労働環境にも大きな影響を及ぼす。
六辻さんは、「価格高騰の長期化が避けられないなら、むやみに増産による価格下落を求めるよりむしろ『そこそこ手頃な価格で手に入って当たり前』という思い込みを捨て、使用量を調整したり、代替品も検討したりといった対策をとる方が、財布だけでなく地球にも優しいだろう」と書いている。
地球温暖化や、先進国と途上国の対立もはらむオリーブオイル問題――「大袈裟にいうなら、オリーブオイル高騰は変貌する世界の一つの象徴といえる」と、六辻さんは強調している。