父は「満州国協和会」の創立委員
小澤ファミリーには、個性派の著名人が多い。小澤さんの長女・征良さんはエッセイスト、長男の征悦さんは俳優。ミュージシャンの小沢健二さんは甥。健二さんの父で小澤さんの兄の小澤俊夫さんは筑波大学名誉教授でドイツ文学者、口承文芸学者として知られ、多数の著書がある。弟の小澤幹雄さんは俳優兼エッセイスト。
その原点となる人物が小澤さんの父、小澤開作さんだ。戦前は歯医者だった。しかし、ただの歯医者ではなかった。『おわらない音楽』によると、1931年の満州事変をきっかけに政治にのめり込んだ。政治団体「満州国協和会」の創立委員になって奉天に移り住む。
「共産主義のソ連の脅威に立ち向かうには、アジアの民族が一つにならなければならない」
という信念を持ち、関東軍作戦参謀の石原莞爾や板垣征四郎らと親しく交わる。小澤さんの「征爾」という名前は、この二人の名前から借用したというのは有名な話だ。
さらに父は新しい政治団体「新民会」を立ち上げ、北京に引っ越す。旧市街・胡同の屋敷に住み、お手伝いさんは中国人の一家だった。