『レ・ミゼラブル』や『飢餓海峡』
広義の失踪者の中には、「桐島聡」のような逃亡者もいる。ビクトル・ユーゴーの『レ・ミゼラブル』や水上勉の『飢餓海峡』の主人公は、過去に罪を犯し、名前を変えて別人生を歩んでいた。
警察によると、2023年8月末段階で、全国の各警察から指名手配され、逃げていたのは約540人。直近では14人が、特に警察庁が指定している重要指名手配被疑者で、「桐島聡」はその中の最古参だった。
「桐島聡」を名乗った男は、神奈川県藤沢市内の工務店で長年、「内田洋」として働いていた。市内の音楽バーなどにはよく顔を出し、「うっちー」とも呼ばれていたという。口ひげを生やし、指名手配写真とは似ても似つかぬ風貌に変わっていた。
生前、周囲に自分の過去は語らなかったという。もしも最期に「桐島」と名乗らなかったら、身元を調べる手掛かりがない状態が続いて、「行旅死亡人」になっていたかもしれない。
元過激派活動家の中には、爆発物取締罰則違反で指名手配されたが、時効が成立、いまだに消息不明の人物もいる。