「2025年問題」を前に資産の争奪戦が起こる?
この変化はコロナ禍の反動かと思いきや、20年前の新紙幣発行時(2004年11月)にも同様に9か月前からタンス預金が減り、一時は前年比7.5%減になったという。
今回同規模の減少が起きた場合、4.5兆円程度の資金シフトが起きる可能性がある。
筆者の熊野氏は「2024年夏にかけてタンス預金からのシフトが活発化することは間違いない」と見ている。理由のひとつは、6月に所得減税が行われることだ。
過去の一時的所得増は貯蓄に回りやすかったが、今回は新紙幣の発行を前に「タンス預金に回す割合は相当に少なくなるだろう」と予想する。
また、インフレ傾向が強まる中、タンス預金の資産価値は実質的に目減りするため、資金の移動が起こっていると予想される。
ただし資金の行方の候補のひとつとして、熊野氏はタンス預金と性格の似た「金(きん)」をあげ、期待されるような「消費拡大や株式・投信へのシフトは起こらない」と見ている。
とはいえ、今後は複合的な政策でタンス預金を吐き出させようとする機会が増えることが予想される。団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となって我が国が超高齢化社会になる「2025年問題」を前に、資産の争奪戦が起こるかもしれない。