米大リーグ(MLB)、ロサンゼルス・ドジャースに、大谷翔平選手(29)に続いて、オリックス・バファローズからメジャー移籍を目指していた山本由伸投手(25)も入団することが決まった。大谷選手は10年総額7億ドル(約1015億円)の契約。山本投手も12年総額3億2500万ドル(約462億円)で合意したと伝えられている。二人合わせると、約1477億円。ドジャースをはじめとする米国の有力球団は、なぜこんなに資金が潤沢なのだろうか。
日本では57球団分の年俸
大谷選手は、日本のプロ野球時代から投打の「二刀流」で活躍。2018年に米ロサンゼルス・エンゼルスに移ってからは、新人王やシーズンMVPなど主要タイトルを次々と獲得。23年のWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)では、エース兼中軸打者として日本優勝に大きく貢献した。
山本投手は、21年から23年にかけてNPB(日本野球機構)史上初となる3年連続の投手4冠を達成。歴代最長タイとなる3年連続で沢村栄治賞・MVPを受賞した。現在の日本球界ナンバーワン投手として知られる。
大谷選手の契約金は、MLBのみならず、北米4大プロスポーツリーグでの過去最高額。サッカーを含めたプロスポーツの世界でも、最高額とされている。大谷選手の超大型契約は、97%が後払い。そのため、山本投手の高額契約が可能になったともいわれている。
投資グループがオーナー
それにしても、ドジャースはなぜこんなに高額の契約金を用意できるのか。朝日新聞は12月12日、「大谷翔平、新天地へ 巨額契約を可能にした背景を球団経営から探る」という記事を公開、その秘密を明かしている。
同記事によると、ドジャースを所有するのは米国の実業家、マーク・ウォルター氏らによる投資グループ。潤沢な資金で積極的な補強を続けてきた。
米国では日本と異なり、ほとんどのチームが個人所有であることが、有力選手獲得に資金をつぎ込む背景にあるという。多くのオーナーは野球以外の分野で資産を築いており、チームを通じて収入を得るよりも、勝利による「知名度」を求める傾向にある。ヘッジファンドの経営で巨額の資産を得てニューヨーク・メッツを購入してから、大型契約を重ねているスティーブ・コーエン氏らが典型だという。
サッカー「推定市場価格」は高い
今年4月、日本プロ野球選手会が発表した年俸調査によると、NPB12球団支配下選手の今年の年俸総額は319億128万円。スポニチアネックスは、単純計算で1球団あたり総額26億円とすると、大谷選手と山本投手の合計でおよそ57球団分の年俸をカバーできることになる、と推定する。
日本のプロ野球では、トップ級の選手でも年俸は9億円前後といわれる。12月19日、埼玉西武ライオンズから福岡ソフトバンクホークスに移った山川穂高内野手(32)の場合、4年総額16億円(金額は推定)程度とみられている。女子のプロゴルフでは2億円超えの選手もいるが、囲碁や将棋では、1億円を超える人は少ない。
サッカーでは、スペイン1部リーグのレアル・ソシエダで活躍する久保建英選手が最近、ドイツの移籍専門サイト『transfermarkt』で、「推定市場価格」6000万ユーロ(約93億円)と評価された。日本人選手としては過去最高になったという。
「大谷超え」の資産家も
ジャーナリストの一色清さんは、「朝日新聞EduA」で12月15日、「1000億円」という数字について、さまざまな角度から分析している。
それによると、世界最大の木造建造物として建設が始まっている大阪・関西万国博覧会の木造リングの建設費は344億円。大谷選手の契約金で1周2キロの巨大建造物が三つできる計算になる。北海道北広島市にできた開閉式屋根のドーム球場エスコンフィールド北海道の建設費は約600億円なので、こちらも造ることができる。
東京商工リサーチが全上場企業3899社を対象に集計したところによると、22年度に1億円以上の報酬を受け取った役員は994人。最高額はヤフーなどを傘下に置くZホールディングスの慎ジュンホ代表で、48億6700万円。巨額だが、大谷選手には遠く及ばない。ただし、毎年の報酬ではなく、持っている株式、不動産、預貯金などの資産のランキングでは「大谷超え」の人もいる、と一色さんは指摘する。
経済誌フォーブスの23年の番付によると、ユニクロを運営するファーストリテイリングの柳井正・会長兼社長は4兆9700億円。制御機器大手キーエンスの滝崎武光名誉会長は3兆1700億円と推定されている。