有力選手には多額の奨学金
今年11月には、スポーツライターの酒井政人さんが『箱根駅伝は誰のものか: 「国民的行事」の現在地』 (平凡社新書)を出版した。酒井さんは東京農業大学在学中に箱根駅伝に出場した経験がある。駅伝やマラソンについての詳しい論評で知られる。
同書では、あまりにも注目度が高くなっているがゆえに箱根駅伝に起きている「弊害」や「格差」について、かなり踏み込んだ記述をしている。
一つは大学間の格差。有力校は年間2億円近い強化予算(合宿や遠征費)を使っている。さらにスポーツ推薦で新入生を獲得できる枠が10~15もある。近年苦戦が続く早稲田大は3枠しかないという。
二つ目は選手の待遇格差。各大学ともインターハイなどで好成績を収めた高校生を奪い合っている。条件として、授業料免除や寮費免除はもちろん、返済不要の奨学金を、選手のランクに分けて払っている大学もある。有力選手には、月に30万円も出している大学もあるという。
経費が潤沢で選手に対する特別待遇が手厚い大学と、そうでない大学とは、選手層に差が出る。現在の箱根駅伝は「公正な競争」になっていない、と酒井さんは厳しく指摘している。