世界最大級のメタバースイベント「バーチャルマーケット」、11回目の開催だ。「バーチャルマーケット2023 Winter」が2023年12月2日から17日まで、メタバースプラットフォーム「VRChat」などで行われている。主催はHIKKY(東京都渋谷区)で、出展・協力企業は過去最多の85超。
見どころは「ありすぎる」ほどだが、VR記者カスマルが体験した3ブースに絞って魅力をお伝えする。ショッピングカートに乗ってレースする、竜にご飯をあげる、自作絵を走って追いかけるなど、VRだからこそできる体験ばかりだ。
スーパー店内の「上空」に虹のサーキット
同イベントは、出展したユーザーの作品が並ぶ「一般ワールド」に加え、「ロンドン」「沖縄」「渋谷/原宿」をパラリアル(編注:「パラレルワールド(並行世界)」+「リアル(現実世界)」を合わせた造語で、リアルとメタバースに並行して存在すること)化した3つの企業出展会場から成る。カスマルは企業出展会場「パラリアルロンドン」、「パラリアル渋谷・原宿」、「パラリアル沖縄」の順で回った。
「パラリアルロンドン」は魔法をテーマにした空間。アクセスすると、道端に杖やホウキが設置されている。杖で指し示した場所に光る魔法陣を描くことができ、ホウキにまたがって空も飛べる。
ホウキで飛びながら辺りを回っていると、一際輝いて見える大きな建物が目についた。食品スーパーマーケット「ベルク」の出展ブース「ベルクランド」だ。
中に入ると、そこはショッピングモールのような空間だった。ベルクのスーパーが複数建っていたので、そのうちの一つに入店。ショッピングカートが並んでいるところまでは、リアル店舗と変わらないが、上空には虹色のサーキットが浮かんでいる――そう、レースができるのだ。しかもショッピングカートに乗って!
ベルクは過去にもバーチャルマーケットに出展しており、「(VR空間内における)スーパー店内でのショッピングカートレース」はこれまでにも実施してきた。今回は進化版として「スーパーベルクカート∞(インフィニティ)」を追加。上空のレインボーサーキットは、新たに走れるようになったコースだ。エナジードリンク「BARK」をゲットするとスピードアップしたり、高低差のある立体コースで大ジャンプができたりと、新要素が登場している。
HIKKYの担当者によると、「カートごとの性能差等もなく、プレイヤーの純粋なドライビングテクニックによってタイム差が出る」という。
カスマルもレインボーサーキットを使ってレースに挑戦! 「BARK」を取って華麗にスピードアップ......のつもりが、あまりに早すぎて操作が追い付かない。コース端のフェンスに何度も激突しながらではあるが、楽しくゴールした。ドライビングテクニックを磨いて、もっとタイムを縮めたくなる。
お腹を空かせた竜が、悲しげに......
次に向かったのは、ピンク系の色合いが特徴的な「パラリアル渋谷/原宿」。原宿駅竹下口から始まり、裏原宿、キャットストリートなどの通りを再現した原宿エリアと、SHIBUYA109付近の渋谷エリアを再現している。
ここでは、道の色々な場所に設置された帽子、メガネなどを装着したり、一般ワールド「龍の背中」のマスコットキャラクター「魔法生物ムーイ」のぬいぐるみを連れ歩いたりできる。
散策していると、行く手に「雲と、浮いている石の階段」が現れた。ブース自体が空を飛んでいるようだ。
ここは「Disney+」で2023年12月20日に独占配信される、オリジナルファンタジー・アドベンチャー超大作「ワンダーハッチ -空飛ぶ竜の島-」ブース。同作は、実写で描く「現実世界の横須賀」と、アニメで描く「ドラゴンが棲む異世界・ウーパナンタ」、2つの世界の物語が同時に展開されていく。
ブース内では、実際に作品に登場するシーンにお目にかかれるそう。石の階段を登っていくと、設置されていたゴミ箱から、作中のキャラクターである竜「ガフィン」が顔を出して出迎えてくれた。
さらに先に進むと、視界いっぱいにワンダーハッチの予告映像が突然流れ、別の空間へタイムスリップ。気づくとアトリエのような空間に。ここは同作の主人公・ナギの母親である「ハナ」の部屋。HIKKYの担当者によると、作中の雰囲気を精密に再現したという。部屋中に飾られたデザイン画は、実際にドラマに使われているものをそのままスキャンし、展示しているそうだ。
部屋の片隅には、腹を空かせている「ガフィン」が。近くの机や棚などに無造作に散らばっているドーナツやマフィンをあげてみると、勢いよく食べるものの、食べ終えると「まだ足りない」と言わんばかりの悲しい表情をする。それを証明するように、「おいしそうに食べてくれた。この調子であげてみよう」というメッセージが、ガフィンの隣に現れる。
食べ物を3個ほどあげると満足したのか、ガフィンの頭上にハートマークが浮かび、ブースに入る前の場所へ戻ってきた。
「ウサギ」を5分間追い回す
最後は「パラリアル沖縄」ブース。といっても、海の中だ。国際通り、沖縄県の離島、首里城をイメージした3エリアで構成されている。
鮮やかな明るい街並みを横目に進むと、「線で描かれた蝶の絵」が飛んでいるのが見えた。パイロットコーポレーション(東京都中央区)の出展ブースだ。ここでは、設置されているキャンバスに、備え付けの筆記具で絵を描くと立体となって浮かび上がる。HIKKYの担当者によると、もし小さな点を打っただけだとしても「スケッチブックに描いた内容がそのまま」立体化されて広場に出現するという。
早速カスマルも体験。キャンバスに、棒人間を描いてみた。描き終わったら右上にあるボタン「OK」を押すと、絵が浮き出た! ウキウキで近づいてみる。
カスマル「あれ? 動かない? もしかして『植物』として認識されてる......?」
揺れることもなく、びくともしない自作イラスト。周りにある他の絵は動いているのに......。もう一度挑戦だ! 今度は「ウサギ」を描いた。
すると今度は立体化するや否や、予測のつかない動きで、辺りを激しく駆け回り始める。撮影しようにもツーショットなど夢のまた夢。5分ほど追いかけ回し、やっとの思いでフレームに収めた。自分が描いたウサギを追いかけまわすなんて、初体験だ! 三ブース三様の、「VRならではの体験」が味わえた。
「バーチャルマーケット2023 Winter」はリアル会場でもイベントを16日、17日に予定している。