駅伝「棄権」の判断基準は? 選手にアクシデント、関係者はどうする

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   駅伝シーズンがやってきた。気になるのは、アクシデントだ。突然、脱水症状などでふらふらになる選手が後を絶たない。チームプレーだけに、選手は無意識に近い状態になっても必死にタスキをつなげようとする。

   選手の安全と、レース続行、どちらを優先すべきなのか。日本陸上競技連盟は2023年11月10日、走行中止の判断基準などを改めて関係者に通告した。

  • レース中のアクシデント…「棄権」の判断基準は(画像はイメージ)
    レース中のアクシデント…「棄権」の判断基準は(画像はイメージ)
  • レース中のアクシデント…「棄権」の判断基準は(画像はイメージ)

繰り返される異常事態

   10月29日に開催された全日本大学女子駅伝。1区と3区で大ブレーキがあった。1区では城西国際大学の選手が転倒して足にけがをした模様で、通常の走りができない状態に。

   3区では大阪芸術大学の選手が、ゴールの300メートルほど手前で急に足取りがおかしくなった。テレビ中継されていたので、変調ぶりが画面越しにもわかる。ふらふらしながら一時は路上に倒れこんだ。再び起き上がり、渾身の力で前に進もうとするが、誰の目にも危険な状態だった。

   駅伝では過去にも、こうした危なっかしいレースがくり返されている。

   2017年のプリンセス駅伝では、「エディオン」チームのアンカーが、ゴールまでわずかのところで突然、走るのを止め、コースわきに向かってふらつきながら歩き出してそのまま倒れこんでしまった。

   2018年の同じ大会では、岩谷産業の2区の選手が、タスキ渡し地点まで250メートルほどのところで転倒、走れなくなった。その後も、路面を這いつくばりながら中継地点を目指す。きわめて壮絶で、痛々しい姿がテレビ画面でしばらく実況された。

「助力」を再確認

   駅伝は、特殊なチームスポーツだ。「タスキをつなぐ」ということが、すべての出場選手に課せられた義務となっている。急に自分の体調が悪くなっても、選手は自分の意志でギブアップしづらい。チームの監督は、選手の安全を祈りつつ、レースの続行も期待せざるをえない立場なので、難しい判断を迫られる。

   繰り返されるアクシデントに、日本陸上競技連盟は11月10日、ウェブサイトで「駅伝・マラソンの安全安心な大会運営についてのお願い ~助力に関する競技規則の再確認~」を公開した。

   現在の競技規則を改めて通知することで、「アスリートが安心して競技に取り組める環境づくりを目指す」のが狙いだ。「助力」や「棄権」について、以下のように記している。

・転倒や意識混濁、疾病等により明らかに通常歩行や競技続行が困難となり、立ち止まりや横臥等の行動を行う競技者に対して、審判員や公式の医療スタッフが声掛けを行うことは、助力とは見なさない。
・本人がなお競技続行の意思を持っていても、競技者の生命・身体保護の観点から審判長もしくは医師の判断で競技を中止させることができる。
・審判員や公式の医療スタッフが一時的に介護するために競技者の身体の一部に触れることは、助力とは見なさない。

   競技規則では、「助力」について、「転倒後、他の競技者から立ち上がることを手助けしてもらう以外に、前に進むための身体的な手助けを得ること」は、「許可されない」と記されている。しかし、上記のように、審判員や公式の医療スタッフによるものは、「助力とは見なされない」と規則に書かれていることを、陸連は今回、改めて通知している。

   さらに、主催者および運営関係者に対し、「改めて、競技規則を確認いただき、競技注意事項や申し合わせ事項での周知、および監督会議等でのご説明をお願いいたします」と念を押している。

渾身のタスキ渡しに応える

   今回の全国大学女子駅伝で、大阪芸術大の4区のランナーは、ふらつく足取りで何とかして中継点までたどり着こうとする3区のランナーを、涙をにじませながら見守っていた。そして、タスキを取ると、自分の区間で23位から20 位に押し上げ、さらに次のランナーが17 位に、その次のランナーも好走し、最終的には14位まで順位を上げた。3区のランナーの渾身のタスキ渡しに、後続のランナーが応える形となった。

   チームのキャプテン・北川星瑠選手はレース後、旧ツイッター(X)で、アクシデントが起きたことについて、「もっとキャプテンとして先に助言できることがあったんじゃないかと思うとすごく悔やみます」としつつ、「この結果を踏まえて(12月の)富士山(女子駅伝)では絶対に挽回します。芸大は本当は強かったというところをみせますのでお楽しみに」と付け加えている。

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