「メタバース」って結局なんだ 敬遠され、今後は一般化?VRユーザーに聞く(前編)

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   「メタバース」が指す意味やサービスの性質は、かなり幅広い。米フェイスブック社が仮想空間分野へ注力するにあたり、「Meta(メタ)」に改名した2021年10月から、このワードは大きな注目を集めた。以来、3次元空間から、平面の「2次元」まで、アバター同士が交流できるさまざまなサービスが登場した。

   ただ、VR(仮想現実)ユーザーの一部には、「メタバース」という言葉自体を敬遠する人もいるようだ。一体どういうことなのか。日頃、VR空間で活動しているユーザー、クリエイターへの取材を通じ、全2回にわたって伝えていく。

  • VRゴーグルを使う人が多いプラットフォームも、VR非対応のサービスも、「メタバース」?(写真の一部を加工しております)
    VRゴーグルを使う人が多いプラットフォームも、VR非対応のサービスも、「メタバース」?(写真の一部を加工しております)
  • VRゴーグルを使う人が多いプラットフォームも、VR非対応のサービスも、「メタバース」?(写真の一部を加工しております)

VR非対応でもメタバース

   シンクタンク「野村総合研究所」は、公式サイトで「メタバース」について「インターネット上の仮想空間」と定義づける。加えて、「メタバース」において「ユーザーは、3次元で構成された仮想空間の中で」アバターを使った交流や商品売買ができる、と説明している。一般的なイメージに合致する説明だろう。

   VRサービスとして人気の「VRChat」や「cluster」は、前述のイメージに近い。3D空間内で、ユーザーがアバターの姿で交流。音楽や演劇イベントなどを開催している。こうしたサービスは「ソーシャルVR」「VRSNS」などと呼ばれることもある。

   一方で、企業のリモートオフィスや不登校支援に使われる「ovice」というサービス。見下ろし型の平面空間にある丸いアイコンの「アバター」を、ブラウザー上で「ドラッグ」操作で移動させ、近づいた人と話せる仕組みだ。こうした仕様ながら、「2次元のビジネスメタバース」を掲げている(oVice社23年7月31日付発表)。上述の定義からは外れそうだ。

   ラオックスグループのギフト販売会社「シャディ」は22年6月、「メタバースカタログ」というサービスを公開した。特設サイトにアクセスすると、同社のギフトカタログの商品数百点の画像が、黒い空間の中に立体的に浮いて出現。ユーザーがドラッグかスワイプして視点を動かし、商品をクリックすると商品名や価格を確認できる。

   アバターの姿で入って他のユーザーと交流することはできない。なお、記者が調べた限り、23年11月13日現在、このメタバースカタログはすでに公開されていない。

VR民が「メタバース」ブームに感じたもの

   記者が22年6月ごろ、cluster上でトークイベントに出演した際、他のユーザーから「一部のVRユーザーは『メタバース』という言葉を快く思っていない」と、リハーサル中に耳にしたことがある。

   X(旧ツイッター)でも、VRChatやclusterをプレイしているユーザーが、「メタバース」にネガティブな反応を見せるポストをたびたび目にする。語感が好きではない、言葉として独り歩きしている、といった意見だ。「メタバース」とされるサービスの利用者側が、なぜこう考えるのか。

   VRChatユーザーであり、ワールド制作やイベント開催を手がける「いとよ」さんに取材した。自身も、22年ごろまでは「メタバース」というフレーズをユーザーが嫌がる風潮を強く感じていたという。

   21年に沸騰した「メタバース」ブームだが、VRChatやclusterは、それ以前からサービスが存在する。古くから親しんでいる「VR民」としては、「自分たちが遊んでいるものを外側の人から(『メタバース』と)名付けられること」に抵抗感を覚えたのではないかと、いとよさんはユーザーの心境を分析する。

   また、ブームに乗じて生まれた多数の「メタバース」サービスや企画には、しっかりとした内容を伴わず消えていったものも多く、自分たちが遊ぶVRサービスまでもが同じように「胡散臭い(うさんくさい)もの」だと思われたくなかったのではないか、と推測する。

   ただ、「メタバース」というワードも悪い面ばかりではなく、近ごろはVR民にも受け入れられつつあるという。例えば仮想空間に詳しくない人に、自身の活動や趣味について説明するときには、対外的に「メタバース」と伝えれば通じやすい。

「メタバース」が一般化する未来

   かつて「メタバース」に向けられていた厳しい視線を踏まえ、いとよさんもVRChatやclusterをまとめて指すときに「VRSNS」と表現していた。しかし23年11月現在は、概ね「メタバース」を用いている。両サービスとも、VR機器を使わずに遊んでいる人が大勢いるためだ。どちらもデスクトップPCだけでプレイ可能で、clusterはスマートフォンにも基本的に対応している。

   こうした背景から、「『VRSNS』、『ソーシャルVR』という言葉を使うと、非VR民を疎外しかねないと感じた」と感じたという。

   23年10月からは、VRChatが試験的にスマートフォンに対応開始している。今後さらにVR機材を用いないユーザーが増えていくと、「メタバース」というワードは一般化し、ひいては表現として「適切」とみなされる時代がくるのではないか。いとよさんは、このように見立てている。

   後編では、仮想空間で活躍するクリエイターが所属する「メタバースクリエイターズ」(東京都渋谷区)に取材。なぜ「メタバース」がネガティブな見方をされるようになったのか、そして「メタバース」を社名に掲げる意味は何か。

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