【連載】Z世代のトレンド研究
「Z世代」は、日々どんな情報に注目し、トレンドを追っているのか。テテマーチ(東京都目黒区)マーケティング研究室「lookey(ルーキー)」のプロジェクトリーダー・川又潤子さんが、Z世代メンバー(同社定義:1995年から2010年生まれ)と共に、はやりのヒト・モノ・コトを取材。人気の秘訣をZ世代の視点で分析し、伝えていく。
Z世代で流行している、位置情報共有アプリ「Whoo(フー)」。馴染みがない人にとっては位置情報を他人と共有することに抵抗があるかもしれませんが、Z世代は友人のリアルタイムな居場所を把握し、器用にコミュニケーションをとっているようです。
10代の男女2176人を対象にした「位置情報共有アプリの利用状況に関するアンケート調査」(Appliv調べ)では、69.9%が「現在位置情報共有アプリを利用している」と回答しています。そこで今回は、Z世代の武井(20歳)が、『位置情報共有アプリ「whoo」を使って平日夜のスキマ時間を埋める』チャレンジをします。
位置情報から行動を推測
以前は「Zenly(ゼンリー)」という位置情報共有アプリが主流でしたが、23年2月にサービスを終了した影響で、様々な代替アプリが出現しました。中でも「whoo」は、「Zenly」に次いで利用されていたアプリのため、特に人気を集めています。友人ごとに、自分の「正確な情報を表示させる」「(わざと)正確な位置情報を表示させない」「最終ログイン場所から位置情報を動かさない」などの設定分けもでき、明確な居所を知られたくない場合も便利です。
ある平日、仕事終わりに会社で「whoo」を開いた武井。全世界が対象なので、友人がアプリに「ログイン」さえしていれば、例えば自分が東京にいながらにして、沖縄にいる人の位置情報もわかります。ただ画面を見ても、会社付近には友人がいない様子。夕食を一緒に取らないかと、誰かを誘うつもりでしたが、早速雲行きが怪しくなり、焦ります。
すると、テテマーチ同期社員・篠川の位置情報が見えました。彼は会社の近くに住んでいるので、どうも自宅にいるようだと予測。
武井:リモート勤務をしているみたいですね。そういえば最近ケガをしたとSNSに投稿していて、しばらくオフィスで見ていないです。せっかくなので、もう一人の同期のエマと一緒に篠川君の自宅にお見舞いに行こうと思います。
「自宅にいるか否か」は声をかける大きな判断軸となりそうですね。
武井から篠川に自宅への訪問について聞いてみると、二つ返事でOKをもらえました。エマはどこにいるでしょうか。
武井:エマを見つけました!外出していて、位置情報が動いています。この動きの早さは徒歩かな。
位置情報にはその人が進むスピードまで表示されるため、今何に乗って移動をしているのか仮説を立てることもできます。
武井からエマに、「退社後、篠川君の自宅へお見舞いに行く」お誘いをしてみると、こちらも快くOKをもらえました。
エマは「通常だと、外出先から直帰することが多いです。帰社することを知らせていなくても、位置情報だけで行動を先読みして連絡をもらえるのは便利ですね」とすっかり使い慣れた様子です。
退社後、武井とエマは篠川の自宅へ向かうべく、チャットツールで自宅住所を聞こうとするも......まさかの連絡が途絶える事態に! どうするのでしょうか。
武井:最初は焦りましたが、アプリのおかげで難なく篠川君の自宅前までたどり着きました。
さすがに部屋番号などの詳細はわからないそうですが、アプリ画面で見られる位置情報から、建物の前まで行くくらいは簡単のようです。
なお、篠川はスマホから離れて料理をしていたため、連絡が取れなかったそう。
篠川:連絡をもらっていたことに気づいた頃には2人は既に自宅前にいて、住所を教えていなかったとは思えないくらいスムーズに集合できました。
住所を教えていない相手が、位置情報アプリを頼りに家まで来る――。こう聞くとびっくりする人がいるかもしれませんが、篠川は「今回のように、事前に約束をしている場合に限り、抵抗は感じない」とのこと。前もって合意のうえ、というのがポイントですね。