VRChat人気の影に巨大な「伏兵」 クリエイターら注目のプラットフォーム(後編)

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   仮想空間内で没入感を持って交流できる「ソーシャルVR」。主要サービスとしてよく「VRChat」を耳にするが、現状はここの「一強」状態なのか。前回の記事では、昨今のソーシャルVR事情や、「VRChat」の普及の背景について伝えた。

   今回は、メタバース上で活動するクリエイターが所属する「メタバースクリエイターズ」(東京都渋谷区)の代表取締役社長・若宮和男さんと、同社に所属するVTuber(バーチャルユーチューバー)のおむらいす食堂(おむ)さん、そしてVRChatやclusterで配信や演劇イベントなどを行う「ききょうぱんだ」さんに話を聞いた。

  • 取材に応じたメタバースクリエイターズ代表・若宮和男さん(アバターの姿)
    取材に応じたメタバースクリエイターズ代表・若宮和男さん(アバターの姿)
  • 同じく取材に答えたおむらいす食堂(おむ)さんのアバター
    同じく取材に答えたおむらいす食堂(おむ)さんのアバター
  • ききょうぱんださんさんのアバター
    ききょうぱんださんさんのアバター
  • 取材に応じたメタバースクリエイターズ代表・若宮和男さん(アバターの姿)
  • 同じく取材に答えたおむらいす食堂(おむ)さんのアバター
  • ききょうぱんださんさんのアバター

clusterにはイベントの強み

   まずVRChatが現在、最も活気のあるソーシャルVRなのか聞くと、おむさんは「一強と言い切れるかというと絶妙」と言葉をにごす。背景にあるのは、「cluster」の存在だ。

   前編でも伝えた通り、clusterはイベントをめぐって独自の機能を有する。cluster内で実施されるユーザーイベントは、公式サイトから日付順に容易に確認可能だ。また参加ユーザーごとに「スタッフ」「ゲスト」「一般参加者」と権限を分け、マイクで発言できるユーザーと、そうでない参加者を簡単に区切ることができる。

   ききょうぱんださん自身、普段の配信活動ではよくVRChatを用いるが、「ライブやVR演劇など、イベント関係ではclusterを使っています」と話す。

   VRChatでは、1つのイベントに入れる人数には、20~40人程度の制限がかかる。ところがclusterだと、最大500人まで入場可能だ。若宮さんは「そういった意味でも(VRChatとclusterの)どちらが盛り上がっているかというと、一概には言えないところもある」と続ける。

   VRChatのユーザーコミュニティーが、イベント時だけclusterを使うケースもある。またパソコンやVRゴーグルだけでなく、clusterはスマートフォンにも対応しており、初心者でも簡単に始められるメリットもある。

「切り取り方によっては、VRChatは(ソーシャルVRとして)一強と言えなくもない。しかし国内で見ると、プラットフォームごとの機能をユーザーが使い分け、(サービスが)共存している面がある」(若宮さん)

それでもVRChatが強いのは

   VRChatではclusterと比べて、ワールドやアバターで表現できる自由度の高さが強みになるようだ。

   若宮さんによると、ユーザーがメタバースに深くはまっていく過程では、受け身の姿勢でイベントなどを「体験」するゾーン、次に、自分から積極的にイベントなどに「参画」するゾーン、そして空間などを自身で「創造」するゾーンの3段階がある。

   ユーザーがメタバースにのめりこんでいくうえで、「参画」ゾーンにおいて「アバター」の概念が重要になるという。「メタバースがユーザーにとって現実と同等に重要な存在になるには、『この世界では、自分はこういう姿をしている』というアバターによるアイデンティティーの確立が必要」とのことだ。

   この点、ききょうぱんださんは、「VRChatだと、アバターはかなり作り込みできます」と語る。「アバターの手からいろんなものを取り出したり、『変身』したりと、『アバター芸』という概念があるほどです。cluterでは表現できないギミックもあるため、自分をより(自由に)表現したい人は、VRChatを好むのではないかと思います」と続ける。

「表現したいことが完全にできる点で、 VRChatの方が『沼』が深いかもしれません」(若宮さん)
「VRChatが強いといわれるのは、まず、ユーザーが自分の好きなものを表現でき、好きな姿になることができて、そしてみんなの『好き』を楽しめる。だからこそ、プラットフォームとして『住みつく場所』になっている気がします」(おむさん)

思わぬ巨大な「伏兵」

   ソーシャルVRとして、それぞれの強みを持つVRChatとcluster。ただ、今後思わぬ伏兵が出現する可能性がある。前回の記事で紹介したゲームプラットフォーム「Roblox」だ。こちらはパソコンやスマートフォンのほか、ゲーム機「プレイステーション(PS)4」「PS5」でも動作。さらに、近ごろはVR環境での動作対応も進んでいる。

   もしも将来的にRobloxのユーザーの間口が広がり続け、さらにユーザーがVR環境に切り替えたら――。「(ソーシャルVRとして)VRChatを一瞬で抜き去る、という可能性も全然ありえる」と若宮さんは話す。Roblox運営の23年1月18日付発表によると、同サービスは世界中で毎日 5600 万人以上のユーザーが利用している。

「Robloxが普及して、『Facebook』と『TikTok』のようにVRユーザーでも年代で分かれ、VRChatは古くさいプラットフォームと言われる、ということもあるかもしれません」(若宮さん)

   一方で、RobloxはVRChatやclusterに比べ、外部のアバターを自由に使うことはできないため、「ユーザーが自分たちのアイデンティティーをそのまま(外のサービスから)持ち込めるか、という点がまだ弱い」と若宮さんは続けた。

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