奇想、血みどろ絵、画鬼、光線画 幕末明治の「個性的な絵師たち」が一堂に

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   東京・六本木のサントリー美術館で「激動の時代 幕末明治の絵師たち」が開かれている。奇想の画家として有名な歌川国芳(1797~1861)、血みどろ絵の月岡芳年(1839~92)、画鬼・河鍋暁斎(1831~89)、「光線画」の小林清親(1847~1915)ら近年、再評価が進み、大人気となっている個性的な絵師たちの作品を一堂に見ることができる貴重な機会だ。

  • 「激動の時代 幕末明治の絵師たち」
    「激動の時代 幕末明治の絵師たち」
  • 「激動の時代 幕末明治の絵師たち」

4部構成

   かつて美術の世界では、「江戸」と「明治」が、それぞれ別の時代区分で語られることが多かった。しかし、本展は連続した流れとして再構成している。

   江戸後期から幕末には、絵画の世界でも激動が起きた。劇的で力強い描写、迫真的な表現、怪奇的な画風など、従来の狩野派とは異なる独創的な作品を描く絵師たちが次々と登場した。本展を通して、そうした野心的な画流が奔流となって明治になだれ込み、どこかで現代にもつながっていることがわかる。

   展覧会は以下の4部構成。

第1章 幕末の江戸画壇・・・19世紀の江戸では、浮世絵をはじめ、狩野派や南蘋派、文人画など多彩な作品が生まれ、まさに百花繚乱の様相をみせていた。
第2章 幕末の洋風画・・・江戸時代後半には、銅版画や洋書が多く流入し、陰影法や遠近法を用いた様々な洋風画が制作されていた。
第3章 幕末浮世絵の世界・・・歌川国芳や歌川派の絵師たちに注目し、幕末の浮世絵の豊饒(ほうじょう)な世界を紹介する。
第4章 激動期の絵師・・・江戸の地に生き、東京で活躍した絵師たちを取り上げ、江戸絵画の伝統を引き継ぎながら、新時代の感覚をあわせ持った作品を特集。

漫画やアニメにも通じる

   第1章では、狩野一信(1816~63)の巨大な「五百羅漢図」に驚かされる。極彩色の強烈な画面だ。西洋絵画の遠近法や陰影を取り入れている。渡辺崋山(1793~1841)が描いたギリシャ医学の偉人、ヒポクラテス像も登場する。第2章では、安田雷洲(?~1859)。彼が描く赤穂浪士の群像は、オランダで発行された聖書の「羊飼いの礼拝」挿絵を原図にした洋風画だ。

   多くの美術ファンにとって注目度が高いのは、第3章と4章だろう。

   3章では江戸後期に輩出した奇想の画家の代表格、歌川国芳が登場する。大胆な構図やデフォルメは、現代の漫画やアニメにも通じる発想の斬新さがある。半世紀ほど前に「奇想の画家」の一人として再評価の機運が高まり、今や絶大な人気を誇る。

   4章では、月岡芳年、河鍋暁斎、小林清親ら。芳年の血みどろ絵は一度見たら忘れられない。「無惨(むざん)絵」という代名詞まである。今年8月22日から来年2月18日まで、「二人の天才 ―葛飾北斎・月岡芳年―」展が大阪浮世絵美術館で開かれている。

   「画鬼」と称された暁斎は、卓越した描写力で知られた。反骨精神の持ち主で、多くの戯画や風刺画も残している。2019年にはサントリー美術館で、「河鍋暁斎 その手に描けぬものなし」展が開かれた。

   清親は、光を巧みに使った「光線画」と呼ばれる新しい風景画を考案。「明治の広重」と呼ばれることもあった。21年には東京の練馬区立美術館で作品展が開かれている。

   本展の出品作品は約170件。江戸から明治へ、そして現代にもつながるこれら異能の絵師たちの画業を、ひとまとめに通観できる。図録も充実している。会期は12月3日まで。

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