棚いっぱいに並べられた便箋や封筒に囲まれながら、匿名の手紙を読み、返事をしたためる――。ちょっと不思議な時間を過ごせる空間が、東京都世田谷区にある。その名も「便箋喫茶」だ。
店内にはペンやテープ、シールなど、手紙を書くための文房具などが豊富にあり、ドリンクやフードといったメニューを頼むと無料で自由に使える(便箋・封筒の無料提供に枚数制限あり)。特に人気なのが、「手紙ガチャ 一期一会」と「シーリングワックス体験」だ。J-CASTトレンドは実際に「便箋喫茶」に行き、取材した。
唯一無二のデザインに仕上がる
「手紙ガチャ」は一回300円。回すと、便箋喫茶を訪れた人が実際に書いた手紙が出てくる。読んだ手紙には返信もできるそうだ。200円で、自分が書いた手紙を手紙ガチャに封入することも可能。
便箋喫茶・店主によると、「手紙を書くことの案内説明」をした利用者から、「書く相手がいない」、「手紙を送ってくれる相手もいないから読む機会もない」という反応が多く寄せられることを受け、設置したという。10代~20代の女性、男性は20代~50と幅広い年代・性別の人が利用するそうだ。
「シーリングワックス体験」では、熱で溶かした蝋(ロウ)を使い、金属印でスタンプを押す。金属印と蝋の色を、それぞれ39種類の中から選ぶことができる。
シーリングワックスは、6色を混ぜてマーブルにもでき、一つとして同じ仕上がりになることがない。世界に一つのデザインからは、趣を感じられる。
「シーリングワックス体験」は、通常300円(税込)で体験でき、「食事とドリンク」または「スイーツとドリンク」のセットを注文すると、無料で行える。追加は1回につき100円(同)だ。
推し活のファンレターを書きに来る人も
便箋喫茶を訪れる客の中には、こんな人たちがいる。
店主によると、例えば「これから産まれてくる我が子」宛てに筆を執った夫婦。恋人と一緒に来店し、最初は読書をしていたものの、やがて自ら手紙を書いた男性。推し活目的でファンレターを書きに来た人がいたのも印象的だったと、店主は話す。
「便箋喫茶は、『手紙を書く文化を残したい』というコンセプトで営業しており、手紙を書く時の飲み物やお食事、スイーツなどに力を入れ、人との繋がりを大切しています」
最近では、2023年8月5日から「10 Friends」というイベントを実施している。1人の手紙に対して10人が返信する企画だ。店で手紙を書き、預けておくと9人から返信がきた時点で連絡がくる仕組み。
参加すると、自分以外の9つの「返信」も見られる。手紙を通して、他者の視点や体験などを知ることができるのが魅力だ。