VTuber起用で売り上げ470%、ライブコマース成功の背景に「信頼」 au「ショッピング with V」に聞く

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   ECサイト「au PAY マーケット」は、「ライブTV」というライブコマースサービスを展開する。インフルエンサーやお笑い芸人がau PAYマーケットアプリ上でライブ配信し、視聴者とコミュニケーションしつつ、出店企業の商品を紹介するのだ。

   そこにVTuber(バーチャルユーチューバー)を起用したら、他番組と比較して流通額が470%に――。auコマース&ライフの執行役員兼事業推進本部長・中森健二氏に取材した。

  • au PAYマーケット「ライブTV」 VTuber起用した商品紹介の様子
    au PAYマーケット「ライブTV」 VTuber起用した商品紹介の様子
  • auコマース&ライフの執行役員兼事業推進本部長・中森健二氏(上)とVR記者カスマル (下)
    auコマース&ライフの執行役員兼事業推進本部長・中森健二氏(上)とVR記者カスマル (下)
  • au PAYマーケット「ライブTV」 VTuber起用した商品紹介の様子
  • auコマース&ライフの執行役員兼事業推進本部長・中森健二氏(上)とVR記者カスマル (下)

YouTube Liveのような盛り上がり

   ライブTVは2019年7月にサービスを開始。実演販売士やアイドル、インフルエンサーを起用し商品販促番組を配信してきた。2021年3月には吉本興業の人気芸人を起用開始し、さまざまなキャストが出演する。

   視聴者はYouTubeやTikTokのライブ配信のように、リアルタイムでコメントを送信できる。アプリ下部のショッピングカートのようなボタンを押すと、紹介している商品の販売ページに飛んで購入可能だ。

   中森氏によると、ライブTVには商品販促という目的はもちろん、番組を通して「au PAY マーケット」や、au全体のサービス群について顧客へのリーチを行う狙いもある。

   そして2023年に入り、VTuberを抜擢するようになった。VTuberが出演するのは「ショッピング with V」という番組。中森氏によれば、23年7月に配信した「with V」の全2回の実績を平均すると、他番組の平均と比較して放送視聴者数は128%。視聴分数は348%。流通額(番組を通した商品売上)は470%だったという。

   アーカイブ動画を確認しよう。例として、9月23日配信の「ショッピング with V ~スペシャル~」回。メインキャストは女性VTuber2人だ。CG描写の出演者と共に、実演販売士が商品紹介を行う。

   ボケやツッコミを交えた軽快なトークや、「有明海はどこの海か」といった商品にまつわるクイズなどを織り込みながら番組は進行する。VTuberが商品を試食することもあり、「香りが強くてびっくり!」「おいしい」と感想を語ると、「いいなぁー!」「食べてみたい」といったコメントが相次ぐ。閲覧数は4万9000件以上、コメント数は3000件以上と表示されており、盛り上がりが伝わる。

プラットフォームが変わっても

   これまで多様なキャスティングを実施してきたライブTV。中森氏によると、これまでの運用を通して、「ライブ配信でどれほど満足いただけるかで、視聴時間や商品の購入確率が変わる」と知見を得たという。あるとき、VTuberというジャンルは「熱量の高いファンが多く、かつ非常に(ファンとの)距離感が近い関係を構築している」ケースが多いと聞いた。

   そこで、23年5月に初起用。ファンと密接な関係を築いているVTuberという存在ならば、YouTubeなどの主戦場からライブTVにプラットフォームが変わっても、多くのファンが見てくれるのではないかとの期待感はあった。

   そこで試験的に配信すると、視聴時間や購入数も含め「非常に良い視聴実績、販売実績」をあげた。本格的なシリーズ化が決まり、7月に開始したのが「ショッピング with V」だ。

   日頃の活動を通してファンとのコミュニケーションが密接なために、たとえば食品についてVTuberが好意的なコメントをすると「じゃあ私も買う」との心理が働きやすいと中森氏は分析する。「それだけファンの方々がVTuberを信頼している証なのだと思います」。

   なぜファンはこうも強くVTuberにひきこまれるのか。中森氏に聞くと、「2次元だからこそ持っている世界観と、その裏側にある生身の人間性が良い融合をしている」と語る。もしも単なるアニメなら、もちろん現実とは異なる世界観を表現できるが、人間としての共感性は視聴者から得づらい。VTuberならではの独自の文化が、高い販売効果を出しているのではないかとの推測だ。

   一方で、通常のインフルエンサーでもVTuberファンと同等の熱量を持った視聴者層を築いている人はいるという。また吉本芸人など、テレビ出演もしているタレントならば、より広いユーザー層の獲得が見込めると強みを語る。

「何かに集中するのではなく、多様な番組枠を展開し、さまざまなお客様がライブコマース、ライブTVを視聴する機会を最大化していきたい」(中森氏)
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