ファンの責任 モーリー・ロバートソンさんが斬るジャニーズ問題

全国の工務店を掲載し、最も多くの地域密着型工務店を紹介しています

「ひと手間」が常識に

   60歳のモーリーさんはニューヨーク生まれの広島育ち。達者な話術を活かし、硬軟両様でメディア露出も多い。週プレでの連載コラムは本号が397回。〈挑発的ニッポン革命計画 導火線に火をつけろ〉の副題がつく。

   さて ジャニーズ問題。創業者による性加害は空前の規模だが、加害者が他界していることもあり、焦点は被害者の救済と、テレビ局や企業の対応、加害者が姉(故人)と築いたビジネスモデルの今後に移りつつある。

   事務所側は本号発売の翌週(10月2日)に「再出発」の記者会見を開き、(1)社名を「SMILE-UP.」に替えて被害者救済に専念、いずれ廃業(2)タレント育成やマネジメントを担当するエージェント会社(社名はファンから公募)を設立...などを公表した。

   モーリーさんが指摘するように、長期かつ多数への性加害は、テレビや雑誌を中心とするメディア、スポンサー企業、広告業界、そしてファンたちの「沈黙」なしには難しかった。膨大な資金が動くゆえに、被害者以外は皆ハッピーという歪んだ構造ができた、というわけだ。とりわけ、代表者の性加害を知りながら所属タレントを使い続けたテレビ局と大企業、広告会社は「共犯」とさえいえる。取引先に人権侵害がないことを確認する「ひと手間」は、いまや世界のビジネス常識となった。

   もちろん、個々のタレントやファンを責めるのは酷だという見方もあろう。ただ、歌やダンスの腕を磨いてスターになった者たちも、売れるまでには事務所の力があったはず。モーリーさん曰く「寡占的な露出で商品価値をブーストさせる」手法である。

   そして、その戦略に踊らされたファンも、後味の悪さという「罰」を甘んじて受けるべきだと。なぜなら「人権侵害が絡む商品やコンテンツを享受し、消費者となることはアウト」だから...ジャニーズ事務所の場合、商品とはタレントであり、コンテンツとは楽曲や映像、出演番組など。それらに熱狂するにも、一定の責任が伴う時代なのだ。

冨永 格

冨永格(とみなが・ただし)
コラムニスト。1956年、静岡生まれ。朝日新聞で経済部デスク、ブリュッセル支局長、パリ支局長などを歴任、2007年から6年間「天声人語」を担当した。欧州駐在の特別編集委員を経て退職。朝日カルチャーセンター「文章教室」の監修講師を務める。趣味は料理と街歩き、スポーツカーの運転。6速MTのやんちゃロータス乗り。

姉妹サイト