ノーベル生理学・医学賞に「コロナワクチンの母」 カリコ博士を救った「テディベア」

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ドルを持ち出せない

   しかし、カリコさんの40年余りにわたる研究生活は、苦難の連続だった。

   ジャーナリスト、増田ユリヤさんの『世界を救うmRNAワクチンの開発者 カタリン・カリコ』(ポプラ社)によると、育ったのは、ハンガリーの首都ブダペストから東におよそ150キロ離れた地方都市。

   実家は精肉店を営んでいた。豚の解体などを間近で見る機会があったが、じっと観察しているような子どもだったという。小学校の5~6年生のころには、全国的な生物学のコンテストに参加して優勝したこともあった。

   大学で生化学の博士号を取得したあと、地元の研究機関で研究員として働く。しかし、研究資金が打ち切られたことから1985年、夫と娘の3人で米国に渡ることに。研究論文に関心を持った米国の大学から招へいされたのだ。

   ところが、当時のハンガリーは社会主義体制。外国の通貨を自由に持ち出すことができなかった。同書によると、米ドルは、わずか100ドルまで。

   これでは米国で生活ができない。闇ルートで車を売ったりして約1000ドルを作った。それをビニール袋に入れ、2歳の娘が持っていたクマのぬいぐるみ(テディイベア)の背中を切って忍ばせ出国した。見つかったら一巻の終わり。米国に到着するまで娘とテディベアから目を離せなかったという。

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