N高・S高生徒制作「メタバース学園ドラマ」 細田守監督も称賛した4作品

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   通信制高校のN高校、S高校で実施している教育プログラム「メタバース学園ドラマ制作プロジェクト~未来の学校生活をVR空間で描く~」。メタバースプラットフォーム「cluster」を使って生徒が制作した作品の上映会が、2023年9月21日に東京・秋葉原で開催された。

   角川ドワンゴ学園がFacebook Japanと連携し展開する、次世代XRクリエイター向け教育プログラム「Immersive Learning Academy」の一環だ。生徒が自らシナリオを考え、3D空間を作り、アバターで演技し、映像を編集。アイデアあふれるドラマ4作品がお披露目となった。

  • SFサスペンス「human?」 クラス中がAIと入れ替わっていたら
    SFサスペンス「human?」 クラス中がAIと入れ替わっていたら
  • 魔法使いのような校長と少年が交流する「ひらけゴマ!」
    魔法使いのような校長と少年が交流する「ひらけゴマ!」
  • 「human?」では親友さえも代理AIだと気付く しかし見た目も声も人間と見分けがつかないなら――
    「human?」では親友さえも代理AIだと気付く しかし見た目も声も人間と見分けがつかないなら――
  • 「ラナンキュラス」は淡い色彩で物語を描く
    「ラナンキュラス」は淡い色彩で物語を描く
  • 登場人物が傷ついて錯乱すると映像が一変
    登場人物が傷ついて錯乱すると映像が一変
  • 36歳の男性と少年が交流する「おじさんと春」
    36歳の男性と少年が交流する「おじさんと春」
  • 上映会に参加した特別講師・細田守監督
    上映会に参加した特別講師・細田守監督
  • 手前はS校・N高生徒
    手前はS校・N高生徒
  • SFサスペンス「human?」 クラス中がAIと入れ替わっていたら
  • 魔法使いのような校長と少年が交流する「ひらけゴマ!」
  • 「human?」では親友さえも代理AIだと気付く しかし見た目も声も人間と見分けがつかないなら――
  • 「ラナンキュラス」は淡い色彩で物語を描く
  • 登場人物が傷ついて錯乱すると映像が一変
  • 36歳の男性と少年が交流する「おじさんと春」
  • 上映会に参加した特別講師・細田守監督
  • 手前はS校・N高生徒

生徒や教師がいつの間にかAIに

   生徒が5人ずつの4つの制作会社(チーム)に分かれ、脚本や編集などチーム内で役割を分担。VR空間を舞台に未来の学園生活を描いた約5分間のドラマを作る。特別講師にアニメーション映画監督・細田守氏、「バーチャル建築家」番匠カンナ氏、作家や俳優として活躍する山田由梨氏を招き、6月にキックオフイベントを開催して始動した。

   以後、約3か月を経て完成した学園ドラマ。最初の上映作品は、VRを使いこなせる人を魔法使いにたとえ、メタバースの魅力を伝える「ひらけゴマ!」だ。途中で主人公が上空へ向けて放つ花火のような魔法を、天高く追いかけ続けるカメラワークは臨場感あふれる。

   次は、SFサスペンス「human?」。人間の代わりにメタバース上の学園で授業を受けてくれる「代理AI(人工知能)」の利用が流行しているという設定だ。主人公はある日、ほかのユーザーの正体が人間かAIかを見分けるツールを入手する。すると、ほかの生徒たちだけでなく、教師までが代理AIだったことに気付く。そして、主人公の親友さえも――。

   ユーザーの名前をアバター上に表示するclusterのネームプレート機能を使い、人間なら名前に「human」、代理AIなら「AI」と表示するという、メタバースならではの工夫した表現が印象的だ。

細田監督「僕だったら...」

   3作目は思春期の葛藤を描く「ラナンキュラス」。自分の痩せた体型を嫌う「ユウ」は、メタバース上では理想の姿をしたアバターで過ごしている。しかしある日、SNS上で「ガリガリの子ってキモイよねー」など体型をやゆする投稿を目にして錯乱。「ここ(メタバース)ではそんなの気にする必要なんてないのに...」と吐露する。ユウが絶望するシーンで映像の色彩が乱れ、ノイズの入った白黒に切り替わる演出は圧巻だ。

   最後は中年男性と少年がメタバース上で出会い、校舎の屋上で遊ぶ「おじさんと春」。36歳のおじさん「達也」が、目の前にいる少年の正体が実は亡き親友だと気付く不思議な物語だ。今を楽しんで生きる大切さを伝えている。

   同作の制作チーム「VFmovieエンターテイメント」の松尾和弥さんによると、達也役の声優は生徒でなく、実際にN校の職員が「現役のおじさん」として担当している。上映会に参加した細田氏は、アニメ調のアバターにリアリティーある「おじさん」の声が吹き込まれるキャスティングに「このズレがいい」と評する。

   細田氏は、いずれの作品も感心した様子で称賛。N・S校「新聞実行委員会」の生徒から、もしも細田氏の高校時代にメタバースが普及していたらどんな作品を作っていたか質問されると、「僕だったら途中で投げ出していたかもしれない」と冗談交じりに述べていた。

   プロジェクトの所感を、角川ドワンゴ学園理事長の山中伸一氏に聞いた。生徒らはインターネットを通じて遠隔で協力して作品を制作しており、同じチーム同士でも「今日初めて(リアルで)会った」メンバーが多いという。「『オンラインコミュニケーション能力』がすごく付きましたよね」と感激した表情で語った。

   プロジェクトの作品は今後、一般公開する方針だ。具体的な時期や公開手段は調整中とのこと。

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