新型コロナウイルスの現在の感染状況について「第9波」と報道するマスコミが増えている。流行の「波」については特に定義がないが、2023年5月以降、感染が長期にわたって拡大、現在も高止まりしていることによるものだ。
政府と医療関係者の認識にズレ
「コロナ急増..."第9波"『ど真ん中』」(テレビ朝日、9月12日)
「コロナは『第9波』 インフルも季節外れの流行 ダブル流行で学級閉鎖が増加 医師は『例年にない状況』」(関西テレビ、9月18日)
今回の流行について、いち早く「第9波」の可能性を指摘したのは、政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会長を務めた尾身茂氏。6月26日、首相官邸で記者団に対し、「(感染の)第9波が始まっている可能性がある」と語った。
7月5日には、日本医師会の釜萢敏常任理事も記者会見で、感染が九州地方で拡大していることから、「現状は第9波になっていると判断することが妥当だ」と述べた。
しかし、7月7日、コロナ担当の後藤茂之経済再生相(当時)は、患者数が大きく伸びてはいないとして、現時点では感染の「第9波」には当たらないと語り、政府と医療関係者の認識にズレが起きていた。
明らかに「新たな波」
感染流行の「波」についての、定義はとくにないとされる。過去の流行期では、いったん感染者数が最も下がり、その後、再び増え始めると、「新たな波と捉える場合が多い」と、釜萢氏はFNNの取材で説明している。
NHKの「新型コロナと感染症」の特設サイトを見ると、今回の流行は5月の途中から始まり、感染者数がじわじわ増えていることがグラフで示されている。新たな「波」が起きていることは明らかだ。現在は高止まりの局面で、神奈川県のように、今年1月ごろの「第8波」よりも感染者が増えていると推計されている県もある。
朝日新聞によると、加藤勝信厚生労働相(当時)は9月11日、大阪市内での講演で「政府では1波、2波、3波という波を数えていない」としつつも「一般的に言えば第9波が来ている」と語り、現状を第9波だと事実上認めた。
尾身茂氏も14日、TBSのニュースで、「まだ全国的に今のいわゆる"第9波"はピークには達していません。まだ多くの地域で感染が少しずつ増えている」と語っている。
厚労省のトップや、政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会長を務めた尾身氏の発言もあり、マスコミ各社が現状を「第9波」と呼ぶことは妥当な状況になっている。