【連載】Z世代のトレンド研究
「Z世代」は、日々どんな情報に注目し、トレンドを追っているのか。テテマーチ(東京都目黒区)マーケティング研究室「lookey(ルーキー)」のプロジェクトリーダー・川又潤子さんが、Z世代メンバー(同社定義:1995年から2010年生まれ)と共に、はやりのヒト・モノ・コトを取材。人気の秘訣をZ世代の視点で分析し、伝えていく。
皆さんは、好きな音楽をどうやって共有しますか? Apple Music、Spotify、またはYouTubeのリンクを送る人が多いのではないでしょうか。これらの動画オンラインプラットフォームや音楽サブスクリプション(定額課金)がはやる前は、CDの貸し借りで、好きな音楽を共有しあっていました。
実は昨今、新しい方法としてTikTokで注目を集めているユニークなアイテムがあります。その名も「The Music」、小さなレコード型キーホルダーです。音楽好きなZ世代の武井(20歳)・川出(23歳)・川又(28歳)が、使い方や魅力を紹介します。
音楽を「持ち歩ける」
「The Music」を使うにはまず、自分のスマホに「The Music」専用アプリをダウンロードします。使っている音楽サブスクアプリから音楽の共有用URLを取得し、専用アプリにペースト。そのうえでキーホルダーをスマホにかざすと、音楽がインストールされます。「The Music」に入れて持ち歩ける音楽は一つのみですが、何度でも変更することが可能です。
音楽を共有される側は、専用アプリは要りません。キーホルダーにスマホを近づけるだけです。
武井:キーホルダーのデザインが、ヴィンテージっぽくてかわいい!
キーホルダーに入れるとしたら、どんな音楽がいいでしょう。各々が好きな曲を選びました。川出は「井上陽水さんの名曲『少年時代』を、ヨルシカさんがカバーした曲」。
川出:両親が、90年代の音楽をいつも聞いていたんです。その影響で、慣れ親しんだシティポップな曲調を、自分の好きな現代のアーティストがカバーしていることが素敵だなと思って日々聴いています!
武井:私は米・アーティストkeshi(ケシ)さんの「B.Y.S」という曲です。自分の気分をあげたいときによく聞いています。
川又:私はUNISON SQUARE GARDENというバンドの「シュガーソングとビターステップ」です。
昔ファンクラブに入っていたことがあります。
推しの一曲は「名刺」代わり
私(川又)は、自分が推しているアーティストの曲をキーホルダーに入れておくことで、いつでも人に勧められると思っています。
「The Music」を使って、好きなアーティストの曲をわざわざ持ち歩くことに、どんな意味があるのでしょうか。川出は「名刺と同じような感覚」だと言い、初めて会った人に自己紹介するときに、キーホルダーを見せたいそう。お気に入りの音楽の共有を通じ、自分の心情や音楽からイメージされる雰囲気も伝えられる点に魅力を感じています。
川出:通常は「(アーティスト名)で検索してください」と、相手に名前を打ってもらって少し手間がかかります。しかし「The Music」ならキーホルダーをスマホに近づけるだけで共有することができます。
Z世代にとって好きな音楽とは「自己表現に近い」ため、「思い入れの強い曲」「自分のファッションや雰囲気に合った曲」「推しているアーティストの曲」など、自分を表わせる曲を入れて楽しむ人が多い傾向があるようです。
だからこそ、武井からはこんな意見も出ました。「自分の好きな音楽を友人に送るのは、少し押しつけがましいのではないかという心配がある」。それだけに、「The Music」を使った共有は、程よい距離感のようです。
武井:友人と一緒にいる時にこのキーホルダーに興味を持ってもらい、読み込み方をレクチャーしながら自然な流れでお気に入りの音楽を読み込んでもらうくらいがちょうど良いですね。
また、レコードのようなデザインがレトロで可愛いので、「これ何のキーホルダー?」とコミュニケーションができるところも、Z世代流の新しい音楽体験なのだと思います。
これからもlookeyは、最新のトレンドを追いかけて行きます!