万博とマイナ 加谷珪一さんはハコモノへのこだわりに喝!

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国ぐるみの失敗

   加谷さんは日経BP社の記者、野村證券グループ投資会社を経て、中央省庁のコンサルティングなどを手がけた。テレビの経済解説でも見る顔だ。

   大阪万博とマイナカード、国際イベントと行政システム改革の違いはあれど、どちらの評判も芳しくない。前者は地元自治体のドンブリ勘定や甘い見通し、後者はもっぱら システム設計や確認作業に問題ありとされる。あえて共通点を探すなら、私なら期限ありきの「突貫工事」や、それに伴う行政の焦りくらいしか思いつかなかい。

   対して加谷さんは、二つの巨大プロジェクトを「ハコモノ信仰」で括ってみせる。プラスチックに個人認証のICチップを埋め込んだカードも、モノ依存という意味ではパビリオンと同じ古臭い発想だと。

   紛失や盗難が恐くてマイナカードを持ち歩けないとか、病院ではカードだけでは不十分で 旧来の保険証も提示すべし、といったナンセンスな話をよく聞く。新システムの導入時にはバグや混乱がつきものだが、デジタルとは名ばかりの、極めてアナログ的な不備が目立つ。まるで「いまメール送ったから」と電話をするような...。

   慣れ親しんだ モノ中心の発想から脱却するのは、かくも難しい。加谷さんはしかし、それなしに「日本経済の復活は難しい」という。想像したくもないが、苦い教訓として国ぐるみの失敗が あと二つ三つ要るのかもしれない。

冨永 格

冨永格(とみなが・ただし)
コラムニスト。1956年、静岡生まれ。朝日新聞で経済部デスク、ブリュッセル支局長、パリ支局長などを歴任、2007年から6年間「天声人語」を担当した。欧州駐在の特別編集委員を経て退職。朝日カルチャーセンター「文章教室」の監修講師を務める。趣味は料理と街歩き、スポーツカーの運転。6速MTのやんちゃロータス乗り。

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