国ぐるみの失敗
加谷さんは日経BP社の記者、野村證券グループ投資会社を経て、中央省庁のコンサルティングなどを手がけた。テレビの経済解説でも見る顔だ。
大阪万博とマイナカード、国際イベントと行政システム改革の違いはあれど、どちらの評判も芳しくない。前者は地元自治体のドンブリ勘定や甘い見通し、後者はもっぱら システム設計や確認作業に問題ありとされる。あえて共通点を探すなら、私なら期限ありきの「突貫工事」や、それに伴う行政の焦りくらいしか思いつかなかい。
対して加谷さんは、二つの巨大プロジェクトを「ハコモノ信仰」で括ってみせる。プラスチックに個人認証のICチップを埋め込んだカードも、モノ依存という意味ではパビリオンと同じ古臭い発想だと。
紛失や盗難が恐くてマイナカードを持ち歩けないとか、病院ではカードだけでは不十分で 旧来の保険証も提示すべし、といったナンセンスな話をよく聞く。新システムの導入時にはバグや混乱がつきものだが、デジタルとは名ばかりの、極めてアナログ的な不備が目立つ。まるで「いまメール送ったから」と電話をするような...。
慣れ親しんだ モノ中心の発想から脱却するのは、かくも難しい。加谷さんはしかし、それなしに「日本経済の復活は難しい」という。想像したくもないが、苦い教訓として国ぐるみの失敗が あと二つ三つ要るのかもしれない。
冨永 格