出したもん勝ち
「大人には、露出できない部位がある」という副題がつく本作。若者のおしゃれトレンドを取り上げつつ、全体としては露出をキーワードにした世代論になっている。
酒井さんは腹見せの心理について、「いつの時代も若い女性は、どこかしら肌の露出をしたがる」「これぞ若者」「大人との差別化」「若さをアピールせずにいられないという、生き物としての本能のようなもの」とみる。内部では処理しきれない、はち切れるような若さが、外に向けてほとばしるというわけだ。
だとすれば、その「本能のようなもの」は男性にもあるのだろう。今ならピアスやタトゥー、私の青春時代 1970年代なら肩まで届くような長髪がそれに当たるのか。自己主張であり、流行であり、どこかに異性への意識が匂う。
女性誌には「真夏の肌見せ大作戦」といった特集が目につく。見せる部位は腹、背中、肩、脚など様々。「出したもん勝ち」「エロカワ」など、挑発的な言葉が飛び込んでくる。
Tシャツに限らず トップスでもボトムでも、通常より短めにカットしたものをクロップド(cropped=切り取られた)丈と呼ぶそうだ。上半身にまとえば胴短脚長に見え、下半身(パンツ)を短い丈にすると細い足首部分が強調され、華奢な印象が得られるという。なるほど、大胆な服装にもそれなりの効果があるわけか。
いずれにせよ、幸か不幸か、私のような中高年は彼女たちの眼中にない。自分の腹の出具合を気にしながら、見て見ぬふりというか、素知らぬ顔をするだけだ。
冨永 格