日本人の生活力 森永卓郎さんが案じる「便利 快適」への慣れ

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余裕があるうちに

   森永さんによると、主要国の食料自給率(カロリーベース)は、フランス(131%)や米国(121%)は輸出超過、日本はドイツ(84%)や英国(70%)より心細い38%と低迷する。何かあれば日本人は真っ先に飢える状況にあり、政府の危機意識もそこに根差す。

   有事立法、価格統制に配給制といえば暗く重たいが、筆者が説く「生活力の身に付け方」はあくまで明るく楽しい。曰く、ベランダ菜園、キャンプでのバーベキュー、体験農業や釣り。非常用の太陽光発電パネル、ペットボトルに取り付ける濾過機などは、平時の野外レジャー全般に活用できるという。

   楽しみながら生活力=危機への対応力が自然と身に付くならば、それに越したことはない。大切なのは「普段からの備え」である。同じことが政府や国レベルでもいえる。食料が足りないから作る、では間に合いそうにない。

   経済アナリストが本職の森永さんだが、ミニカーや空き缶など、ちまちました物の収蔵家としても知られる。ジャングルや有事では役立たないにしても、そうした「遊び」が癒しとして自他を助けることもあろう。何事も余裕があるうちが華だ。

   便利で快適な都市生活。コンビニにおにぎりが並んでいる間に、不便と不快からの「避難訓練」をしておきたい。

冨永 格

冨永格(とみなが・ただし)
コラムニスト。1956年、静岡生まれ。朝日新聞で経済部デスク、ブリュッセル支局長、パリ支局長などを歴任、2007年から6年間「天声人語」を担当した。欧州駐在の特別編集委員を経て退職。朝日カルチャーセンター「文章教室」の監修講師を務める。趣味は料理と街歩き、スポーツカーの運転。6速MTのやんちゃロータス乗り。

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