新型コロナウイルスの感染拡大が続いている。政府はまだ「9波とは考えていない」とのスタンスだが、すでに「9波に入っている」との見解を示す県も増えている。国に頼っていられないと、独自に対応を考える県も出ている。
11週連続で増加
「先週、第9波の入り口にさしかかっているということを申しましたが、もうこの状況はあきらかに第9波に入ったと言わざるをえないと思っております」
愛知県の大村秀章知事は2023年7月27日の会見で、新型コロナの感染状況について、これまでよりも一歩踏み込んだ言い回しで危機感をにじませた。
23日までの1週間に報告された愛知県の感染者数は、1定点医療機関あたり19.68人。全国平均の13.91人を大きく上回る。
5月8日にコロナが「5類感染症」に位置づけられ、感染状況が「定点把握」に変わってから、愛知県の人数は11週連続で増えている。
高知県は7月28日、県健康政策部の家保英隆部長が会見。「(感染者が)実質これだけ増えてまいりますと9波に入ったことを前提に対応をしていかないといけない」と語った。
高知さんさんテレビによると、高知県内の新規感染者数は、1医療機関あたり19.2人。前の週の約1.4倍に増えた。全国で12番目に多い。入院患者は207人と1週間で倍増。重症が12人、中等症が16人。病床占有率は43.3%。
一方、全国平均よりも定点把握の数値が低い県では、まだ「9波」とは認識はしていない。岡山県は、7月16日までの1週間で1医療機関あたり9.29人。前の週の約1.26倍だが、伊原木隆太知事は会見で、「伸び方、伸び率が穏やか。岡山県で第9波に入ったとは言えない」と慎重だ。
数を数えて、公表するだけ
コロナの感染状況については、日本医師会の釜萢敏常任理事が7月5日、定例会見で、「現状は第9波になっていると判断することが妥当」との見解を示している。
しかし、新型コロナウイルス対策を担当する後藤茂之経済再生担当相は同月7日、「政府として、今の段階で新しい流行の波が発生しているというふうに認識しているわけではない」と述べ、流行の「第9波」に入ったとの見方を否定した。
ただし、仮に「9波」ということになっても、感染法上の扱いはすでに「5類」に変わっているため、国は特別の方策をとることができない、と指摘する専門家が多い。「インフルエンザ並み」の対応が原則で、「第8波」までのような強い措置は難しい、というものだ。
感染症が専門の神戸大学・岩田健太郎教授は7月29日、読売新聞で、「厚生労働白書には5類感染症の『主な対応』として、『発生動向の収集把握と情報の提供』としか書いていません。要するに『数を数えて、公表するだけ』ですから、これでは、感染拡大は防げません」と語っている。
感染状況を色分け表示
インフルエンザでは、定点把握の人数が「10」を超えると注意報、「30」を超えると警報レベルとされている。しかし、コロナではそうした数値基準もない。このため、独自の対応をしている県もある。
宮崎県は以前からウェブサイトで、県内を7つの圏域に分け、それぞれのコロナ状況を数値だけでなく色分けで告知している。紫(定点報告数50)、赤(同20)、オレンジ(同10)、黄色(同5)の4段階で、感染状況を示し、県民に注意を呼び掛けている。直近の状況は、6地域が赤、1地域がオレンジだ。
徳島県の後藤田正純知事も7月21日、新たな基準を設けたことを明らかにした。定点当たりの感染者数が5人以上で「注意」、10人以上で「警戒」、20人以上で「厳重警戒」、30人以上で「警報」というものだ。県はこれを、ウェブサイトに大きく掲載している。
23日までの一週間、同県の定点把握の数値は16.51人。このため27日段階では、県ウェブサイトに「警戒」と表示されている。
伊勢新聞によると、東海3県の知事は7月31日のテレビ会議で「新型コロナウイルスのさらなる感染拡大が懸念される」として、感染防止対策を徹底するよう3県の県民に呼びかける共同メッセージを出している。
先週1週間(7月17日から23日)の、全国の1医療機関当たりの感染者数は13.91人。東京は9.35人にとどまっているが、九州は大半が20を超え、四国や東海地方も全国平均を大きく上回っている。このため感染状況について、東京との温度差、地域差がかなりある状況が続いている。