男性アイドルグループ「JO1」が、2023年7月24日にニューシングル「NEWSmile」をリリースした。発売形態がCDではない。雑貨・日用品「CD GOODS(Charming Daily Goods)」にQRコードを付与した。そこを読み取るか、商品を専用アプリに映し出すと曲が聴ける。
ツイッターでは、ファンを中心に好評だ。CD以外での楽曲販売は、過去にも例はあった。
チャートを狙ったものではない
「音源をCDではなく、QRコードなどから聞けるグッズとセットでの販売は、米国で、ツアーグッズに音源ダウンロードコードをセットで販売する『バンドル』が以前からあります」
K-POP事情に詳しいライター・DJ泡沫さんは、こう話した。チャート1位を狙った「抱き合わせ商法」で、米ビルボードでは2020年にルール改正がされるほど、活発だったという。
日本ではエイベックスが、CDプレイヤーなしにデジタル音源を聞ける専用アプリやQRコード付きフォトカード、イヤホンを差し込むと聞ける仕組みのバッジと、開発に挑戦していたと説明。それ以外にも国内では、人気バンドがCDではなくグッズとデジタル音源のペアで曲を販売してきた経緯がある。
K-POPアイドルでも、CDとは違う「実物タイプのアルバム」が見られるようになってきた。グッズそのものから聞けるような「スマートアルバム」や、ダウンロードコードが付いたグッズ・フォトカードなどが、「音楽チャート」に売り上げ枚数としてカウントされる仕組みになっているという。
DJ泡沫さんは、米のバンドル売りやK-POPアイドルの販売手法は、チャート成績を目的にしていると指摘。一方JO1の「CD GOODS」は、チャートを狙ったものではない、という見方を示した。双方のどこに違いがあるのか。
音楽をCDで聞かない時代
JO1の「CD GOODS」は、QRコードから音源をダウンロードするのではない。QRを読み取ると、各種音楽ストリーミングサイトが掲載されたページにアクセス、登録しているサイトで楽曲再生ができる。または、グッズを専用アプリから読み込んでAR(拡張現実)再生ができる。いずれにしろ、ダウンロード数としてはカウントされないので、当然それに基づいたランキングには反映されないはずだ。
さらに「CD GOODS」の場合、販売先や、販売期間が限られている上に、購入数制限もある。加えて、そもそもファンであれば、「CD GOODS」を購入する・しない以前に、自発的に曲を聞く人が多いだろう。これらの事情から、グッズが売れてもストリーミング回数が劇的に増えるわけではないと考えられる。DJ泡沫さんが「CD GOODS」について、「チャートを狙ったものではない」と位置付けたのは、このためだ。
では、グッズに曲を付けて売る意味とはなんなのか。
「CDを売っても、CDで聞かない時代になってきたからではないでしょうか」
とDJ泡沫さん。この発想から「CD GOODS」が生まれたのではないかと推察、ファンサービス的な一面があるのではないかと話した。ファンの反響を見ても、使いやすい日用品であるうえ、QRコードがついているため、見せたり、貼ったり、あげたりすることによる楽曲の「布教(ファンが他者に宣伝する行為)」が容易にできると喜ぶファンも多い。ただ、「布教」から聞く人はいるだろうが、グッズの数が限定されていることやその手間から、やはりチャートに与える影響は大きくないだろうというのがDJ泡沫さんの見解だ。一方で、こうした試み自体、日本では珍しいという。
なお「CD GOODS」は、「曲のプロモーションのため」東京・渋谷にオープンしたポップアップショップでも購入できる。韓国では、K-POPアイドルの新曲リリース時に見られる。
「ランキングを狙わない」こうした販売方法は、定着するか。DJ泡沫さんは、ファンは「成績」にこだわるので難しいかもしれないと考える。半面、ポップアップストアは他のグループでも取り入れる可能性はあるとした。