『人間の証明』『悪魔の飽食』森村誠一 西村京太郎、内田康夫との共通点

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回り道してベストセラー

   戦時中の強烈な体験を経て戦後、3人はそれぞれの人生を歩み始める。すぐに作家になれたわけではなかった。

   西村さんは、子どものころから推理小説を愛読していた。戦後、いったん人事院に就職したが、29歳で退職。松本清張の『点と線』を読んで、このくらいなら自分でも書けると思って作家を志した。

   ところが、あらゆる懸賞小説に応募したものの、落選が続いた。長い下積み時代は、パン工場の運転手、競馬場の警備員や生命保険の勧誘員、私立探偵などをしていた。78年の『寝台特急殺人事件』の大ヒットで、ようやく人気作家に仲間入りする。

   森村さんは大学卒業後、しばらくホテルに勤務。69年に『高層の死角』で江戸川乱歩賞、73年に『腐蝕(ふしょく)の構造』で日本推理作家協会賞。76年の『人間の証明』が爆発的ヒットとなり、超売れっ子となった。

   内田さんは戦後、大学に入学したが、中退。しばらく、「記憶から消したい」ような「惨憺たる」生活が続いた。

   やがてテレビやCM制作の仕事を経て40代半ば過ぎから推理小説も手掛け始める。82年の『後鳥羽伝説殺人事件』で、警察幹部を兄に持つルポライター、浅見光彦を主人公として初登場させたことが成功。これが100話以上も続く大人気シリーズとなる。

   3人とも、大きな挫折や回り道を経て、超人気作家となった。西村さんは著書500作以上、森村さんも400冊以上、内田さんも200冊近いといわれる。量産家が多いミステリー作家の中でも際立った存在だった。しかも作品は、映画やテレビシリーズで大ヒットが続いた。

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