人と会話する人工知能(AI)を、メタバース(仮想空間)内に導入する試みが増えている。近ごろはメタバースプラットフォーム「VRChat」で、AIと連携したキャラクターを配置する事例が複数出ている。
舞台は東映アニメーションのメタバース企画「ONN'ON STUDIOS」、そして世界最大のVRイベント「バーチャルマーケット(Vket)2023 Summer」だ。
人間なのかAIなのか
「ONN'ON STUDIOS」は、複数のワールドで構成される空間。2022年12月からプロジェクトを開始し、その第三弾として新ワールド「ImaginaryPark2070」が23年6月29日に公開された。プロジェクト初の試みとして公式キャラクター「メモリ」と「えん」を、「VR空間内AIコンシェルジュ」として配置している。
「メモリ」「えん」は入口でユーザーを出迎え、ワールドについて案内する。「ソニーのキャラクター対話AI技術」を導入しており、自由に会話できるという。
「メモリ」「えん」に会うには、あらかじめVRChat上でフレンド(友達)申請してから合流する必要がある。実際に試した。ワールドに入ると、一般的なアバターと同じように、ユーザー名が「メモリ」の頭上に表示されている。これだけ見ると、人間が操作するアバターと区別が付かない。
「メモリ」に近づくと、「さてはアニメがお好きですか」と音声で話しかけてきた。「いいえ」と返すと「おっとそうなんですね!」とメモリは驚く。その後、表情豊かに「デジモンアドベンチャー(アニメシリーズの名前)は好きですか」「どのデジモンが好きですか」などと会話が続く。
試した限り、会話は向こうが質問し、こちらが答えるシンプルな一問一答形式だ。「VRChatにいらっしゃるのは何回目ですか?」と聞かれたタイミングで、こちらから「おすすめのワールドはありますか」と質問すると「おお、メタバースの住民なんですね」と返答するなど、不自然なやり取りになった。応答の精度はあまり高くないかもしれない。