陸上競技にニューヒロインが誕生した。バンコクで行われたアジア陸上選手権大会で2023年7月14日、女子走り幅跳びで優勝した秦澄美鈴選手(はた・すみれ、27=シバタ工業)。日本記録を17年ぶりに更新し、世界のトップ級に躍り出た。
トレードマークは茶髪。身長169センチ。モデルも務める異色のアスリートだ。
走り高跳びから転向
今大会で、日本は16個の金メダルを獲得した。その中で最も際立ったのが秦選手だ。
優勝記録は6メートル(m)97。池田久美子選手が2006年に樹立していた6m86の日本記録を、17年ぶりに更新した。今季世界4位の好記録だ。昨年の世界陸上なら3位に相当する。これにより秦選手は、今年8月の世界陸上と来年のパリ五輪の参加標準記録も突破した。
秦選手にはいくつかの特徴がある。一つは遅咲き。走り幅跳びを本格的に始めたのは武庫川女子大3年のころ。
中学時代はバスケットボール部。高校に入って短距離と走り幅跳び。大学に入ってからも当初は走り高跳びが専門だった。
走り幅跳びに軸足を移してから間もない2018年、早くも日本選手権で2位に。しかし、この時はまだ6m08。その後、少しずつ記録を伸ばし、自己ベストは今年5月に出した6m75。今回は一気に22センチも上回る大ジャンプを見せた。
試合前に美容院やネイルサロン
秦選手は大学卒業後、兵庫県の産業用ゴム製品のメーカー、シバタ工業に所属している。日本オリンピック委員会(JOC)が実施するトップアスリートの就職支援ナビゲーション「アスナビ」を通じての採用だ。
就職後、秦さんは意外な形で同社に貢献している。その様子を20年5月15日のスポニチが「"モデルジャンパー"秦澄美鈴 競技歴2年で走り幅跳び日本女王 所属先ではイメージガール」と伝えている。
それによると、所属先「シバタ工業」のレインブーツのイメージガールを務めている。インターネットで検索すると、モデル姿でポーズをとる秦選手の写真が幾つも見つかる。「小さい頃からモデルをやりたかったけど、やってみると緊張して...」とスポニチの取材に語っている。試合前の験担ぎは、美容院やネイルサロンに行くことだという。
陸上競技のフィールド種目は、トラック種目ほどは注目されにくい。しかし、昨年の世界陸上では、やり投げの北口榛花選手(25=JAL)が3位に入った。日本の陸上女子フィールド種目では、戦前戦後を通してオリンピック・世界選手権で史上初となる銅メダル獲得だった。
北口選手はこのところ絶好調。7月17日、ポーランドのシレジアで行われた国際大会では、自身の持つ日本記録66mを1m04上回る67m04で優勝している。今シーズン世界1位の大記録だ。今年の世界陸上では、北口選手に加えて、秦選手にも注目と期待が集まりそうだ。