オマケつきも
筆記用具にこだわる人は多い。文筆のプロだけでなく、万年筆の書き味だったり、紙の滑りだったり、インクの微妙な色合いだったり、力点の置き方はそれぞれ。作中にも「ぬらぬらもいいけれど 俺の万年筆には多少のひっかかりがほしい」「鉛筆は がさがさの紙で芯先を削って書く感触が好き」といったニッチな嗜好が例示されている。
この雑誌が創刊されたのは2004年。多くの文章が「書く」ものから「打つ」ものに変わり、実用品の筆記具が趣味の対象になっていく時代と併走してきた。趣味文CLUBなどの取り組みは、限られた読者層をがっちり組織化する試みだ。
「ボトルレター」はそんな読者同士をつなげるサービス。お互い文具好きだけに話が合うのはもちろん、筆記具や字体、添えるイラストなどにも凝る人が多い。最近では お勧めの小物をオマケで付ける読者もいるそうだ。
瓶入りのボトルレター(ボトルメール)は、世界中で古くから知られた伝達手段。創作物では、孤島に漂着した人が一縷の望みを空き瓶に託す...といった設定が多い。アガサ・クリスティーの代表作「そして誰もいなくなった」では、犯人が海に投げ込んだ瓶入りの告白文が漁船の網にかかり、すべての真相が明らかになる。
拾われた時から 新たな物語が始まるボトルレター。もちろん現実はそれほどドラマチックではなく、多くの手紙は人の目に触れることなく 力尽きる。
未知なる不安や期待はそのままに、誰かに必ず、それも同好の士に読んでもらえる「安心ボトル」があってもいい。
冨永 格