趣味としての文具 清水茂樹さんが語る「ボトルレター」の魅力

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オマケつきも

   筆記用具にこだわる人は多い。文筆のプロだけでなく、万年筆の書き味だったり、紙の滑りだったり、インクの微妙な色合いだったり、力点の置き方はそれぞれ。作中にも「ぬらぬらもいいけれど 俺の万年筆には多少のひっかかりがほしい」「鉛筆は がさがさの紙で芯先を削って書く感触が好き」といったニッチな嗜好が例示されている。

   この雑誌が創刊されたのは2004年。多くの文章が「書く」ものから「打つ」ものに変わり、実用品の筆記具が趣味の対象になっていく時代と併走してきた。趣味文CLUBなどの取り組みは、限られた読者層をがっちり組織化する試みだ。

   「ボトルレター」はそんな読者同士をつなげるサービス。お互い文具好きだけに話が合うのはもちろん、筆記具や字体、添えるイラストなどにも凝る人が多い。最近では お勧めの小物をオマケで付ける読者もいるそうだ。

   瓶入りのボトルレター(ボトルメール)は、世界中で古くから知られた伝達手段。創作物では、孤島に漂着した人が一縷の望みを空き瓶に託す...といった設定が多い。アガサ・クリスティーの代表作「そして誰もいなくなった」では、犯人が海に投げ込んだ瓶入りの告白文が漁船の網にかかり、すべての真相が明らかになる。

   拾われた時から 新たな物語が始まるボトルレター。もちろん現実はそれほどドラマチックではなく、多くの手紙は人の目に触れることなく 力尽きる。

   未知なる不安や期待はそのままに、誰かに必ず、それも同好の士に読んでもらえる「安心ボトル」があってもいい。

冨永 格

冨永格(とみなが・ただし)
コラムニスト。1956年、静岡生まれ。朝日新聞で経済部デスク、ブリュッセル支局長、パリ支局長などを歴任、2007年から6年間「天声人語」を担当した。欧州駐在の特別編集委員を経て退職。朝日カルチャーセンター「文章教室」の監修講師を務める。趣味は料理と街歩き、スポーツカーの運転。6速MTのやんちゃロータス乗り。

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