JR山手線の車内に包丁を持った男性がいて、乗客が逃げだした――。2023年6月25日、こんな騒ぎがあったと複数メディアが報じた。同日付読売新聞オンラインによれば、男性は警察の任意聴取に対し自身が料理人と説明。勤務先を辞め使っていた包丁を持って電車に乗ったと話したという。
同報道によると、2本の包丁は布にまかれていたが、ほどけて周囲の乗客に見える状態だったとみられる。また、避難した乗客2人が転倒などで軽傷を負ったとしている。こうした鉄道内への包丁の持ち込みが大騒ぎにつながる事案が、近年たびたび発生している。
料理人、すし職人の仕事道具が
今回の山手線の事案から6日前。6月19日には、福岡市地下鉄の列車内で包丁を所持している人がいると運行関係者から110番通報があったと、毎日新聞(電子版)が報じている。同記事によると、警察官が男性に事情を聴いたところ、男性は料理人であり、包丁は仕事で使うものと判明。違法性はないと判断したとのことだ。
京急空港線では2022年8月26日、車内で刃物を持った人がいると110番通報があった。同日付の朝日新聞デジタルは、警視庁の話として、すし職人の男性が持ち物の刃物を落とし、驚いた乗客が非常停止ボタンを押したと伝えている。男性は刺身包丁など3本を、さやを付けた状態でカバンに入れて持っていたとのこと。
19年12月23日には、JR京葉線で「刃物を持った男がいる」として警察官が駆け付ける騒ぎがあった。同月25日付東京新聞(電子版)は、男性は料理人で包丁を持って帰るところだったと報じている。
全体を包装して飛び出さないように
18年6月9日に東海道新幹線車内で発生した刃物による殺傷事件を受け、鉄道運輸規定が定める社内持ち込み物に関する規則は改正され、19年4月1日から新たに施行されている。これに伴いJRグループや私鉄21社でも手回り品のルールが19年4月1日から変更された。
従来の鉄道運輸規定でも危険物の持ち込みは禁止されてきた。19年4月1日から施行されている改正では、持ち込み禁止物に「刃物」を明記。ただ同乗者に危害を及ばさないよう梱包されたものは除くとしてある。鉄道各社も特段の梱包方法を施していない限り「包丁類、ナイフ類、なた、鎌、はさみ、のこぎり」などは持ち込めないと定めている。
刃物の適切な梱包方法は、「刃物を鉄道車内に持ち込む際の梱包方法についてのガイドライン」(平成30年12月国土交通省鉄道局)で定めている。
刃渡り6cm(センチメートル)以下の刃物を持ち込む場合は、ガイドラインは「車内では使用せず、袋等に収納しておくことが必要」としている。カッターナイフの刃先をしまい、ペンケースの中に入れておくとの例を挙げている。
一方、刃渡り6cmを超える刃物については「直ちに取り出して使用できないような状態にしておくことが必要」だ。悪意を持って使用したり、誤って乗客に刺さったりした場合は死傷につながる危険性が高いからだ。
たとえば刃先をプラスチック製や革製のさやケースに収納する。あるいは段ボールなどで刃先を覆った上で、刃物全体を新聞紙などで包装し、さらに持ち運び時に飛び出さないよう丈夫な袋や箱、カバンにしまう。もしくは小売店などで購入した場合は、買ったときの梱包状態を保持する。こうした状態で梱包するよう求めている。
同ガイドラインによれば、鉄道係員は必要に応じて、乗客が持ち込む刃物の梱包状態を点検する場合があるとのこと。