寿司と団扇 壇蜜さんは新郎新婦の初仕事に「扇ぎ合い」を提案

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体験という土台

   オチの入米(にゅうまい?)はやや苦しいが、ウェディングケーキをいなり(ちらし)寿司に換えるというのは面白いアイデアだ。新郎新婦に寿司屋の縁故者がいれば、もうどこかで実行されているかもしれない。いなりでもちらしでも、あらかじめ人数分を用意しておけば、宴中の儀式は形式的なもので済む。ケーキに比べ地味だが、広まればコメ消費にも貢献するからJAあたりが関心を示すことは...ないか。

   グラビア撮影の小道具に使った団扇から、寿司の話に展開していく壇蜜さん。間もなく400回となる長期連載らしく、手慣れた筆致である。自身の経験という強固な土台があるので、終盤、新婚セレモニーへの「飛躍」もそれほど浮いた感じはない。

   確かに、酢飯づくりを単独でやると忙しい。硬めに炊いたご飯が熱いうちに、酢を加えながら切るようにして混ぜ、扇いで味を定着させる。すぐに冷ますのは、蒸気がこもってべちゃつかないようにするためらしい。出来上がれば同じようなものだが、味にこだわるなら混ぜにも扇ぎにも手は抜けない。複数での作業にはそれなりに理がある。

   恒例で連載に添えられる一句は〈あおぐたび 広告チラつく団扇かな〉

   では私もひとつ...〈つまむたび 壇蜜想う稲荷かな〉

冨永 格

冨永格(とみなが・ただし)
コラムニスト。1956年、静岡生まれ。朝日新聞で経済部デスク、ブリュッセル支局長、パリ支局長などを歴任、2007年から6年間「天声人語」を担当した。欧州駐在の特別編集委員を経て退職。朝日カルチャーセンター「文章教室」の監修講師を務める。趣味は料理と街歩き、スポーツカーの運転。6速MTのやんちゃロータス乗り。

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