大手電力7社は、家庭用電気料金の値上げを2023年6月1日利用分から始めた。それに先立ち4月利用分からは、大手電力10社が法人向け電気利用料の値上げをスタートしている。
どちらでも大幅な値上げを行なったのが、北陸電力だ。北海道新聞23年3月27日付記事によると、法人向け電気代は25〜27%の値上げ。また、家庭向けでは約4割の値上げだと、NHKが23年6月1日付記事で報じている。北陸電力の管轄エリアで営業している会社、そして個人に値上げの影響と対策を取材した。
節電しても「焼け石に水」
安井ファーム(石川県白山市)は石川県内で、大規模なブロッコリー栽培を展開。大型の冷蔵施設(冷蔵庫)を保有している。
例年、6月は春作ブロッコリーの最盛期だ。広報によると、「庫内を常に最適保管温度に保つため、その部分で電力を大きく消費します」。また、冬場は育苗のため保温が必要となる。育苗施設内は、温床線を用いて加温するが、電熱を使うため電力消費が大きい。
従来、冷蔵庫稼働のある月の電気料金は50〜60万円だった。これが値上げになる。「継続的に支払うとなると、その経済的負担は大きいと言わざるを得ないです」と頭を悩ませる。
野菜を扱っているため、前述の冷蔵施設や育苗施設で節電はできない。そのため、「冷蔵庫の扉の開閉をこまめに行う、事務所のエアコンの温度設定を変えるなど、どうしても細かい対策に終始してしまいます」。しかし、値上げ分を考えると、「焼け石に水といったところですので、正直、お手上げです」と明かした。
利用客に影響する形で節電「考えていない」
チャンピオンカレー(石川県野々市市)にも、取材した。同社では、工場でのカレー製造や店舗での営業に電力を使う。電力自由化になり、北陸電力以外の電力会社と契約していた。ところが「電力不足でその会社の供給がままならなくなり、最近になり北陸電力を使用するようになった」という。
値上げの影響について、「もちろん少なからず出るが、しばらくは様子を見ていく形になる。2021年11月〜22年1月と、22年11月〜23年1月を比較すると3割程増加した経緯もあり、注視していくことは間違いない」。
広報によると、「もともと節電・節水などの意識は持っており日々の営業で行っているので、特別な対策を実施する予定は現段階ではない」。また、特に消費者に影響の出る部分での節電は考えておらず、商品への価格転嫁も検討していないという。
屋外で過ごして節電に
法人向け電力料金が3割弱アップしているうえ、6月からは家庭料金が約4割増だ。北陸の事業者なら基本的に、そこに勤務する人たちは同じ地域に住んでいるはず。いわばダブルパンチとなっている。
安井ファームの広報担当者に、家庭での電気代について聞いた。夫婦と子ども1人の3人家族。昨夏の電気使用料金は平均約1万円で推移していた。今年は、昨年と比べて在宅時間が減っているため、電気代もその分激減している。それでも夏の電気代が1万円だった場合、「これに単純に4割上乗せされると考えると、月4000円増ですから、決して軽くない負担ですよね」。家計は厳しくなる。
節電対策に何かしらの工夫は必要だろうと話す。コロナ禍による規制が緩和に向かっており、「自宅にこもるのではなく、図書館などの公共施設を利用したり、公園で遊んだりと、外で過ごす家族の時間を増やして」対策したいと答えた。