【作リエイターズアトリエ(通称「作リエ」)】
テレビアニメ「ポプテピピック」のゲームパートを描き、映像制作やイベント主催など、フリーランスでマルチに活躍する山下諒さん。隔週水曜夜、各分野で活躍中のゲストクリエイターや美大生を招き、山下さんがMCとなって、「創作」をテーマに、ツイッターの「スペース」や「オンラインセミナー」で語らう企画が「作リエ」だ。
連載では、スペースで出た話題から、エッセンスを抽出してお届けする。未来のゲストは、今この記事を読んでいるあなたかも?
第23回のゲストは、ギャラリー運営者・ネットタレントの宮崎壮玄(みやざきたけはる)さん。テーマは「中国SF『三体』が面白すぎる! 日本やアメリカのSFとはココが違う」だ。スペースアーカイブはこちらから。
「ドラえもん」の四次元ポケットの仕組み、知ってる?
宮崎さんは大学生の頃に中国に興味を持ち、2006年に初めて上海へ旅行。12年には上海に「移住」した。14年に、中国発の動画プラットフォーム「bilibili(ビリビリ)」へ、友人と共に動画投稿を開始し、毎日更新を続け、大勢のファンを獲得するに至った。「一昨年くらいに、累計10億回再生」を果たしたそうだ。
今も日中を股にかけて活動しているうえ、東京・原宿にある「SOMSOC GALLERY」の運営に、中国人の仲間たちと共同で当たっているため、最新情報が次々に入ってくる。23年6月7日現在は全国統一大学入学試験「高考(ガオカオ)」の話で国中が盛り上がっているとしつつ、長期的に人気を誇っているコンテンツとしては、「中国SF」があると話した。中国語では「科学幻想」、略して「科幻」と呼ばれているそうだ。
もともと中国文学においては、リアリズム小説が重んじられており、SFはマイナー分野とされてきた。しかし、長編SF「三体」(作:劉慈欣)が08年ごろにヒットしてから主要ジャンルに認められたという。
「同作は『文化大革命』が出発点です。歴史公証もしっかり行っています。空想の世界ですが、中国の具体的な歴史、生活が盛り込まれています」(宮崎さん)
なぜ「三体」がヒットしたと思うか、中国人の友人たちに直接聞いたところ、フィクションなのに、「リアルで、自分たちの生活に直接つながっている気がする」ためだという。壮大な中国の歴史・文化を下地にしていることは、国民にとっては親しみやすさを感じさせる一方で、外国人にしてみれば新鮮な面白み、「ザ・チャイナ感」を楽しめる。
すると、「中国SF」と、日本や米国といった世界のSFとの違いは何なのか、と山下さん。宮崎さんは「ざっくり言って、二つある」と語りだした(29:38~)。
一つ目は、作家の層。中国SFの書き手には、科学の知識が担保されている、いわゆる「エリート」層が多いという。
宮崎さんは「ドラえもん」を例にとって対比した。四次元ポケットはどういう技術、システムで道具が成立するのかがブラックボックスであり、それが暗黙の了解だ。しかし中国SFでは、作中に出てくる新技術がどのような理論で働くかを、専門用語を用いてロジカルに説明しようとするという。二つ目は、登場人物の位置づけに関して。詳細はスペースにて(33:40~)。
では、日本発のSFは中国で好まれないのか...というと、実はそうでもない。昭和に生まれた、あの特撮が大人気なのだ。宮崎さんによれば、「80~90年代生まれの中国人、ほぼ100%が見たであろう」という作品の名は......(43:28~)。