国内でスマートフォン(スマホ)を手がける企業が消滅しつつある――。こう指摘する報道が相次いでいる。近ごろ、京セラでは個人向けスマホ販売からの撤退が、FCNTではスマホ製造や販売事業の停止が発表されたからだ。
2023年5月30日付日本経済新聞(電子版)は、国内でスマホを製造するのはソニーグループとシャープだけと報道。またシャープは台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業傘下にあるため、5月31日付産経新聞(電子版)は「残る国内大手は実質的に『エクスペリア』シリーズのソニーグループのみ」と伝えている。このまま、国産機種はスマートフォン市場から姿を消すのだろうか。
スマホ販売伸び悩む
富士通のモバイルフォン事業本部を前身とし、「arrows」シリーズや「らくらくスマートフォン」で知られるFCNT。業績悪化を背景として2023年5月30日に民事再生法の適用を申請し、携帯端末の製造や販売事業の停止を発表した。
「かんたんスマホ」シリーズや「G'zONE TYPE-XX」を手がける京セラは、5月16日に一般消費者向けのスマホ販売事業から撤退する方針を発表。低収益なコンシューマー向けスマートフォンを縮小させ、収益性の改善を図るとしている。
振り返れば、国内の大手家電メーカーではパナソニックやNECが2013年に国内個人スマホから撤退。2021年には「バルミューダ」がスマホ事業に参入し「BALMUDA Phone」を発売したものの、23年5月12日に携帯端末事業の終了を発表した。
携帯電話やモバイル専門のライター・佐野正弘氏に取材した。日本市場では、スマホはすでに飽和状態にあり、性能面での進化の停滞も背景として買い替えサイクルが長期化しているという。さらに2019年の電気通信事業法改正などにより店頭での大幅値引きには規制が加えられ、もともと販売が伸び悩んでいたと指摘する。
またコロナ禍では、スマホに使われる半導体が不足し高騰。22年からは円安の進行で端末価格を値上げせざるを得ず、販売が落ち込んだ。結果として、世界市場でのシェアが小さい国内メーカーは限界を迎え、撤退や破綻が相次いだと分析する。