「撮影中」外部にわかる機能
冒頭で触れたグーグルグラスは、2013年に開発者に向けて「オープンベータ」として1500ドルで発売。写真やビデオ撮影が可能なほか、ネット検索やGoogleマップといったアプリを視界に表示できる。
ところが、2015年に発売を中止。その後は法人向けのメガネ型端末を展開し、日本でも2021年から新機種の「Glass Enterprise Edition 2」を発売したが、生産は打ち切られ、23年3月15日に販売を終了した。
ウェブマーケティングを手がける「パンタグラフ」(東京都渋谷区)は、自社ブログの2015年3月4日付記事でグーグルグラスが販売中止した理由を紹介。「安全性の問題とプライバシーの問題が大きな要因と言われています」としている。
屋外でデジタル情報に集中することで、運転や歩行時の事故につながる危険があったとの指摘だ。またグーグルグラスはウインク動作や音声指示によりカメラ撮影が可能だが、周囲からは撮影中なのか否かが一見してわからず、プライバシー侵害の恐れが危惧されていたという。
経済や投資について報じている北米のウェブメディア「Investopedia」の記事(最終更新22年12月13日)も、グーグルグラスが「失敗」に終わった理由を分析。プライバシー侵害の懸念により、一部の飲食店ではこのグラスを着用したユーザーの入場を禁止していたという。
記事では1500ドル(23年6月6日現在なら約21万円)という価格設定についても言及。これを購入できる余裕のある層は最先端のスマートフォンで満足しており、グーグルグラスに魅力を見出せていなかったと指摘した。
23年6月5日に公開されたアップルの映像では、旅客機に搭乗した女性がVision Proを装着して映画を見るという使い方が紹介されているが、どの程度このデバイスが公共施設や屋外での利用を想定しているかは不明だ。
ただ、周囲のプライバシーへの配慮なのか、ユーザーがカメラ撮影しているときには、「EyeSight」技術により撮影中だと周囲にはっきりと知らせるようになっているという。動画を見る限りは、撮影中には外部ディスプレーが点滅しているように見える。
価格は約48万円と安くはないが、空間コンピューティングというコンセプトや「Persona」、「EyeSight」といったユニークな機能により、独自の立ち位置を確立していくのか。