新型コロナウイルスが2023年5月8日、「5類」に替わった。それから間もなく1か月。感染状況の報告は、「定点把握」に替わった。日本ではじわじわ感染者が増えていることが明らかになっているが、お隣の中国では再び感染が急拡大しているようだ。中国当局の公式発表はないが、日本の大手メディアの特派員が実情を伝えている。
感染状況が発表されない
中国は長く「ゼロコロナ政策」でコロナを封じ込めてきた。しかし、2022年12月に政策を転換。その結果、今年初めにかけて大流行した。その後、短期間で感染が収まり、市民生活はコロナ前に戻った。
ところが最近、再びコロナが流行しつつあるという。読売新聞は5月23日、「中国でコロナ再拡大、発熱外来には患者の列」という特派員電を報じている。
記事によると、北京市中心部の病院で、発熱外来を訪れた患者が列を作り、防護服姿の職員らが対応に追われている。中国メディアは、上海や広東省広州でも発熱患者が増えて、受診まで3時間かかる病院もある。SNSには「周囲は再感染した人ばかり。怖い」と不安視する投稿が増えているという。
中国では、4月29日を最後に1週間ごとの全国の感染状況の統計を発表していない。そのため、詳しい感染状況がわかっていない。
「二陽」「第2波」
テレビ朝日は6月1日、「中国にコロナ"第2波"迫り来る実感 ついに自分も感染」という冨坂範明・中国総局長電を報じている。
それによると、中国で最近、よく聞く言葉に「二陽(アーヤン)」がある。新型コロナ検査で「2回目に陽性になる」という意味だ。
また、「第2波」という単語も、ニュースで見かけることが多くなったという。「ゼロコロナ政策」からの転換期、去年の終わりから今年の初めに発生した感染の大爆発が「第1波」。ところが、再びコロナ感染の波が来るのでは?という懸念が、いま中国で高まっている、というのだ。
冨坂総局長も西安出張中に感染。北京のマンションで療養を強いられた。支局スタッフの家族、上海の同僚、同じマンションの住人、大使館の知り合い、多くの人が、同じようなタイミングでコロナに感染しているという。
中国政府のコロナ専門家チームを率い、国民からの信頼も厚い感染症の専門家、鍾南山氏は、5月22日に開かれたフォーラムで、「6月末に第2波のピークがくる」として、週におよそ6500万人の感染者が出るという予測を発表済だという。
「定点把握」で3週連続増加
コロナ感染者は、日本でも増加中だ。東京都では、「定点把握」で1週間ごとに発表される数字が、3週連続で増えている。
NHKによると、定点把握の対象になっている都内419の医療機関で、感染者数の合計は先月28日までの1週間で1647人。1医療機関あたりでは3.96人。
これは、前の週の3.53人の1.12倍で、3週続けて増加傾向にあり、専門家は「今後の動向に十分な注意が必要だ」と指摘しています。
また、免疫を逃れやすい性質が指摘されている「XBB」系統の変異ウイルスの割合が増えて、全体の9割に上っているという。