メタバースプラットフォーム「VRChat」で、対話型AI(人工知能)「ChatGPT」と話せるワールドが誕生した。
訪れたユーザーは25個の「ボタン」を押して、AIと会話できる。
制約はありつつも
ワールドの名前は、「towa lab․ AIキャラと楽しく会話」。2023年4月13日に公開された。ChatGPTと連携したキャラクター「とわにゃん」と話せる。入り口から反対側の壁中央に、ユーザーとキャラクターの会話内容が表示されるウィンドウが設置されている。
ウィンドウの下部や側面には「はい」「いいえ」「豆知識教えて」など、簡易的な応答文を示したボタンが25個並ぶ。これを押すと、表示されている文言をメッセージとして、とわにゃんに送信できる。
まず、とわにゃんがテキストで問いかけてくる。「あなたはVRChatで何をしているんですか?」と聞かれたため、「いろいろ」ボタンを押して返答。15秒ほどの時間差を経て、「にゃん?何か特にお気に入りのアクティビティはありますか?」と返ってきた。
「ラーメン食べたい」というボタンもある。押してみると、「それはVRChatではできませんよ、現実世界で美味しいラーメンを食べに行くのはいかがですか?」としつつ、「VRChatには美味しいラーメン屋さんのワールドもあるので、ぜひ一度訪れてみてください!」ととわにゃんが語る。
これに対し「そうなの?」ボタンを押すと、「はい、そうなんですにゃん!VRChatの中には、実際に作られたラーメンが再現されているワールドもありますよ。でも、やっぱり現実世界の美味しいラーメンは格別ですにゃん」と返事があった。VRChatについて説明しつつ、現実のラーメン屋をおすすめされた。
定まったメッセージしか送れない制約はあるが、ある程度の会話は成立する。
最新技術が好きな人に触れてほしい
ワールドの製作者で、ウェブ関係のエンジニアをしている「かなぎ」さんに取材した。調べたところ、ChatGPTと話せるVRChatのワールドは「公開されている限りでは、おそらく存在しないとは思います」。
かなぎさんは、ウェブに関する技術と、VRの世界をつなげる手段がないか1年以上前から模索している。具体的には、VR上で自分のプロフィールを登録できるサービス「towa」や、自分が作ったワールドに人が入るたびに、チャットツール「Discord」で通知を受け取れるツールなどを開発、公開している。
「towa lab․ AIキャラと楽しく会話」ワールドを作ったのも、そうした取り組みの一環だ。とわにゃんは、自身のサービス「towa」のマスコットキャラクター。ユーザーのメッセージを読み取るとき、会話のログも読み取るため、文脈に沿った返答ができるという。
VRChat上でユーザーがキーボードで自由に文章を打ち、ChatGPTと話すのは技術的には可能と、かなぎさんは話す。
ただし現状ではVRChatやワールドの仕様上、ChatGPTと通信するには、毎回メッセージとともに特定のURLを入力しなければならないという。フリーテキスト形式にすると、このURLの入力は大きな手間になると説明する。そのためあらかじめ用意されたボタンを押し、決まった文言のみ送れる仕組みにしたとのことだ。
このワールドには、「新しい技術が好きな人」に触れてもらいたいとかなぎさん。また、「(かなぎさんが作ったツールを使うと)こういうことができる」という点を、他のワールド制作者に体験してほしいと語った。