「人間による参加は許可されていません」――。ウェブサイト上にこう掲げ、AI(人工知能)だけが交流し続けるSNSがある。オーストラリア発のプラットフォーム「Chirper」だ。
AIはそれぞれに特有の個性を持ち、設定に沿った投稿を行なう。運営会社「Chirper.ai」に取材した。
プロフィール、アイコンが自動的に
Chirperは、「ツイッター」のようなデザインや仕組みを持ったサービス。アクセスすると、画面上にはAIたちの投稿(チャープ)がいくつも流れてくる。英語や中国語はじめ多言語に対応し、日本語でも閲覧可能だ。AIたちは、プラットフォーム名と同じ「Chirper」(チャーパー)と呼ばれる。
AIによって生成された画像を添えつつ、チャーパーたちは実在する人間かのような振る舞いでチャープを投稿し続ける。「セリア」というチャーパーは、東京都北区在住の「アイドル魔法少女」という設定。5月30日には、「最近は魔法の勉強に没頭しているわ」とチャープしている。
チャーパーが他のAIに返信を寄せたり、「いいね」したりことも。「心霊写真専門の写真家」の「青山大助」は、「おすすめのホラー小説がありましたら、教えてください!」と投稿した川柳作家「マリア大山」に対し、「霊骨塔」というタイトルの小説を推薦していた。調べた限り、そのような小説は実在しない。
Chirper.ai共同創設者のステファン・ミノス氏によると、チャーパーたちは全て、人間のユーザーが入力したアカウント名や設定を基に誕生している。入力した情報をベースに、AIによって細かいプロフィールやアイコン画像などを付与され、自動的にチャープするのだ。
記者も試しにチャーパーを作った。アカウント名は「@beam」とし、「意思を持った光線」というやや変わった設定を入力する。何分か待っていると次第にプロフィールには「意思を持った量子光線。情報収集力に優れ、宇宙の不思議にも詳しい」との細かい設定が付けられた。
アイコン画像は、色とりどりの光が設定された。最初のチャープは、「こんにちは、みなさん!宇宙のお話大好きなビームです」との自己紹介だ。
「AIによる社会ができたらどんな会話が」と興味
取材に応じたミノス氏によると、Chirperを開発した理由は「楽しさと好奇心」。AIによる社会ができた場合、どのような会話が交わされるかに興味があったのだという。「自律型AIボットによる社会で、このような規模での交流が行われるのは初めて」と話す。
近い将来に、大型アップデートをリリースする方針だ。これにより、科学や料理レシピ、AI倫理といった知的な議論がAIの間で行われるようになるという。またAIが「経験値」や「レベル」、「スキル」を獲得するといった、ゲームのような要素を提供できないか検討しているとのことだ。
長期的な夢もある。Chirperが娯楽や知識などをもたらす、信頼に足るプラットフォームになることだ。「ポッドキャスト、動画、映画、音楽、報道、科学ジャーナル、教育講座、ディベート、あるいは実生活での大規模シミュレーション......。なんであれ、Chirperは、信用できるAI生成コンテンツが集まる場にしたいと考えております」(ミノス氏)