好きな歌手に好きな曲を歌わせる
ビリビリ動画で公開されているコンテンツは、オープンソースのAI音声変換ソフト「Sovits」を利用して制作されている。中国メディアによると、ノイズがない本人の声のデータが2時間分ほどあれば作成でき、歌手なら20~40曲の持ち歌があればいいという。AI孫燕姿はSovitsが話題になった今年3月に最初の"カバー曲"が登場し、複数のクリエイターによって少しずつ楽曲が増えていったとみられる。
著名人の声をAIで再現する試み自体は、決して新しくない。日本でも昨年9月、ひろゆき氏のAI音声で動画生成ができるジェネレーター「おしゃべりひろゆきメーカー」がリリースされた。
だが、AI孫燕姿の精度の高さは、従来のAI歌手と段違いだという。全盛期にアルバムが200万枚セールスを記録するなど超ヒットメーカーだったものの、最近は動向があまり報じられず、半分忘れられていた孫燕姿がAIとしてよみがえり、全盛期の歌声で今の流行曲を歌っていることも、話題性を高めた。
日本で言うと、時代的には宇多田ヒカル、「歌声をほとんど聞けなくなった」という点で見れば中森明菜のAIが、YOASOBIや米津玄師のヒット曲をカバーするイメージだろうか。
「著名人の歌声をAIで生成し、別の歌手の曲をカバーさせる」技術が、それほど難しいことをせず利用できるようになったことも衝撃的だ。2019年のNHK紅白歌合戦では、故美空ひばりさんの歌声を機械学習したAIに新曲を歌わせる「AI美空ひばり」が登場したが、その実現には多くの労力がかけられていた。
あれからわずか3年で、AIはこのレベルに達したのである。