「WEBTOON×個人作家」の可能性 現役編集者が予想、次の注目ジャンルは...

【すばらトゥーン】
スマートフォンで読むのに最適化されたフルカラーの縦読み漫画、「WEBTOON」。韓国発のコンテンツだが、昨今は国産作品の台頭もめざましい。
ナンバーナインが運営するWEBTOON制作スタジオ「Studio No.9」の漫画編集者・遠藤さんをメインパーソナリティに迎え、ツイッターのスペースで「国産のすばらしいWEBTOON作品とホットトピックを紹介する番組」を実施。記事では模様をダイジェストでお届けする。

   第二回は、イラスト・漫画制作会社フーモア(東京都中央区)でWEBTOON事業部の事業責任者を務める井本洋平さんをゲストに迎え、おすすめの国産作品を紹介。後半では「WEBTOON×『個人作家』って実際どうなの?」として、業界のホットな話題を取り上げた。

  • 「Studio No.9」の漫画編集者・遠藤さん
    「Studio No.9」の漫画編集者・遠藤さん
  • イラスト・漫画制作会社フーモアでWEBTOON事業部の事業責任者を務める、井本洋平さん
    イラスト・漫画制作会社フーモアでWEBTOON事業部の事業責任者を務める、井本洋平さん
  • 暴食のベルセルク ~俺だけレベルという概念を突破する~(c)マイクロマガジン
    暴食のベルセルク ~俺だけレベルという概念を突破する~(c)マイクロマガジン
  • 「Studio No.9」の漫画編集者・遠藤さん
  • イラスト・漫画制作会社フーモアでWEBTOON事業部の事業責任者を務める、井本洋平さん
  • 暴食のベルセルク ~俺だけレベルという概念を突破する~(c)マイクロマガジン

アニメにも舞台にも実写映画にもなった大人気作

   二人のおすすめ作品と、選出理由は下記の通り。WEBTOONをよく知らない人に「まずはこれ」と言える一冊(1)と、今アツい一冊(2)を選んでもらった(9:30~)。

■井本さん

(1) 神血の救世主 ~0.00000001%を引き当て最強へ

「WEBTOONの売れ筋を理解した主人公像、ストーリー構成で、これからWEBTOONのシナリオライターをやろうという人は必読。一般的なWEBTOONだと、1話あたり60か70コマのところ、同作は80コマくらいあり、読後の満足度が高い」(井本さん)
2023年5月で1000万ビューを突破した、現代バトルファンタジー「神血の救世主」 (C)江藤俊司/疾狼/3rd Ie/Studio No.9
2023年5月で1000万ビューを突破した、現代バトルファンタジー「神血の救世主」 (C)江藤俊司/疾狼/3rd Ie/Studio No.9

(2) 暴食のベルセルク ~俺だけレベルという概念を突破する~

「原作は小説。横読み漫画化され、アニメ化も決定。WEBTOON制作にあたり展開を大きく変更せず、できるだけ原作を忠実にビジュアル化し、世界観をしっかり伝えることに特化。小説、横読み漫画、アニメと比較して楽しめる」(井本さん)
「ダークファンタジーらしく、主人公は『暴食』という、悪そうな響きのスキルを持っており、出で立ちも黒ずくめ。『暴食』を使うと反動があり、闇落ちの危うさをはらんでいる。どうなってしまうのか、とハラハラさせられる」(遠藤さん)
「暴食のベルセルク」より。フルカラーだから主人公の成長を感じ取りやすい(c)マイクロマガジン
「暴食のベルセルク」より。フルカラーだから主人公の成長を感じ取りやすい(c)マイクロマガジン

■遠藤さん

(1) ReLIFE

「漫画家・夜宵草さんによる、青春・人間ドラマが楽しめる学園漫画。4年半もの長期連載をしていた作品で、200話以上ある。紙単行本化(シリーズ累計発行部数200万部)、アニメ化、舞台化、実写映画化と、数々の『国産WEBTOON作品初のメディアミックス事例』を達成した」(遠藤さん)

(2) ツギハギミライ

「夜宵草さんによる新連載。国産WEBTOON作品で、同じ作家さんが複数作品を発表し、かつそのどちらもヒットしている例はほとんどない。事情があり、過保護に育てられた主人公が、社会人になってから生まれて初めてハサミを使い、感動する演出が見事。設定を上手く使ったカタルシスを感じさせてくれる」(遠藤さん)

個人作家に「エッセイ」WEBTOONを描いてほしい

   続いて「WEBTOON HOTPIC」(41:42~)。今回のテーマは「WEBTOON×「個人作家」って実際どうなの?」だ。

   井本さん、遠藤さんは「スタジオに入らなければ、WEBTOONは作れないのか」という問いに対して、「そんなことはない。一人だと描けないなんてことはない!」と声を大にして言いたいそうだ。「個人で素晴らしい作品を生み出し、長く活躍し続けている作家さんもいる。応援したい」と、遠藤さんは夜宵草さんが手掛けた二作品を今回、おすすめしたという。

遠藤さん「個人とスタジオとでは、作り方も強みの生かし方も違う。個人だと新しいアイデアや手法をスピーディーに試せるし、スタジオなら得意分野を生かして分業できます」
井本さん「業界が盛り上がるためには、我々があまり『WEBTOONってスタジオでやるんだよ』と、出しゃばって言いすぎちゃいけないフェーズに来ていますよね」

   井本さんは、「企業において金と時間をかけて作品を生み出す以上、ヒット率を高めるために、ある程度トレンドを追ってしまう」ことの課題を挙げた。WEBTOONでトレンドとされるジャンルといえば、主人公が圧倒的な力で敵を蹴散らす「俺TUEEE」系や、過去や異世界へ転生して人生をやり直す「転生系」がある。既に人気を博している特定分野の中で、いつまでも繰り返し制作していては「さびしい未来になっちゃうかも」。

   そうした側面もあり、個人作家による「成功例はまだないが、やったら面白いのでは」というジャンルの開拓や参入に、希望を託しているようだ。特に、二人が注目しているのが「エッセイ」。縦に読む、スライドさせるまで次の展開がわからないというWEBTOONの構造や、作画コスト上の観点から「最適」と言えるという。その理由とは(47:38~)。

   さらに終盤、「WEBTOONにリメイクしたら反響がありそうな、横読み漫画」にも話が及んだ。遠藤さん曰く、WEBTOON業界人の多くがバトルアクション「BLEACH」を挙げるそうだが、井本さんがチョイスしたのは......詳細はスペースにて(1:00:53~)。

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