広島市で開かれていた主要7か国首脳会議(G7サミット)が2023年5月21日、閉幕した。広島は、世界で初めて原爆が投下され、甚大な被害を受けた都市。サミットでは「核軍縮」が大きなテーマになったが、この機会に平和を訴えようとするミュージシャンの活動も目立った。
「Reason」や「アビが鳴く」
EXILEは、G7広島サミットに合わせて応援ソング「Reason」を書き下ろした。
EXILEのTAKAHIROさんは、「被爆地である長崎出身の一人として、G7広島サミット応援ソングを歌う意味や使命を胸に刻みながら、広島から精一杯の歌を届けたいと思います。平和を願う日本中、世界中の皆さんと、心が共鳴し合えることを祈っています」とコメントした。
EXILEの応援ソングは、サミットに先駆けて5月4日に開催された平和の祭典「#HIROSHIMAミライバトン」などで披露された。
広島ホームテレビ(広島市中区)は、ロックバンド・ポルノグラフィティがG7広島サミットを契機に書き下ろした新曲「アビが鳴く」を、同局公式のサミット応援ソングとして5月12日から番組やCMに起用した。主に夕方の情報番組「ピタニュー」(毎週月~金 夕方4時40分~)のG7広島サミットのコーナーや協賛CMなどで使われた。
ポルノグラフィティの二人は広島県出身。
平和公園でピースコンサート
同じく広島出身のシンガーソングライター原田真二さんが中心となって「広島ワールドピースコンサート」も5月17日、平和記念公園で開かれた。音楽を通して、広島から平和の大切さを訴えるのが狙い。
山陽新聞によると、世界平和を呼びかける「ひろしまから始めよう」の合唱で開幕。原田さんをはじめ、早見優さんら国内外の約10組が出演し、平和や子どもをテーマにした曲を届けた。
原田さんはピースコンサートを長年実施。ロシアのウクライナ侵攻をきっかけに昨春から特に力を入れており、サミットで世界の注目が集まる故郷での公演を決めたという。
被爆地広島は、平和を祈る音楽と縁が深い。戦後間もない1947(昭和22)年には、「ひろしま平和の歌」がつくられた。同年8月に開催された「平和祭」に向け、主催団体の広島平和祭協会が歌詞を一般公募し、同年8月6日の第1回平和祭で合唱された。今日まで平和記念式典で歌い継がれている。
浜省、拓郎、永ちゃんも
広島出身の有名なミュージシャンは多い。これまでに何人もが「ヒロシマ」関連の作品を歌っている。
なかでも、シンガーソングライター、浜田省吾さんの「八月の歌」は強烈だ。単に被害の歴史を語るのではない。八月になるたびに「ヒロシマ」の名のもとに、平和を唱えるこの国は、アジアに何を償ってきたか、と「加害者」としての側面も鋭く問いかけている。1986年の作品だ。
2022年末に公演活動から引退した吉田拓郎さんは鹿児島生まれだが、広島育ち。1980年の作品に、「いつも見ていたヒロシマ」がある。作詞は岡本おさみさん、作曲が吉田さん。YouTubeで約200万回再生されている。
「八月の光が オレを照らし・・・」で始まる歌詞は、直接「原爆」を語ったものではない。とはいえ、「時はおし流す 幾千の悲しみを」「時は苦しめる 幾千の想い出を」「焼けつきた都市」などのフレーズから、暗黙の内に「ヒロシマ」が浮かび上がる。YouTubeのコメント欄では、「原爆の日」には毎年この歌を聴く、と書いている人もいる。
そして、矢沢永吉さん。1987年に米国で「FLASH IN JAPAN」(フラッシュ・イン・ジャパン、日本では1999年発売)を発表している。タイトル見ただけで、内容は推測可能だ。原爆投下によって一変した世界と、核廃絶への思いが、そのままストレートに歌われている。
ちなみに浜田さんと矢沢さんは、父親が被爆者だ。