人工知能(AI)で作成された偽情報が、実際に新聞や雑誌に掲載され、発行元が謝罪に追い込まれるケースが海外で続いている。AIを使うと、本物のような原稿の作成が可能になるためだ。一方で、人に代わって合法的にAIに文章を作ってもらう形のビジネス利用も進んでおり、さまざまな影響が出ている。
実在しないエクアドル人作家の署名入り
アイルランドの日刊紙アイリッシュ・タイムズ(Irish Times)は2023年5月12日、AIで作成された投稿記事を掲載してしまった。
AFP=時事によると、実在しないエクアドル人作家、アドリアナ・アコスタコルテスの署名入り。アイルランド人女性が「フェイクタン」と呼ばれる塗料で肌の色を濃くしているのは文化の盗用だと主張する内容の意見記事だった。
その後、この架空の作家名と同じ名前のツイッターアカウントのユーザーが英紙ガーディアンに対し、記事の約80%はChatGPTの最新版「GPT-4」で作成したと明かした。
このユーザーは、自分たちはアイルランドの大学生で、意見記事を送ったのは、ジェンダーや人種、性的指向など特定のアイデンティティーに基づく集団の利益を追求する政治活動をめぐる極端な言説への議論を起こすためだと語った。
同紙は、「読者との信頼関係を損なった」と謝罪、記事を削除した。投稿の場合は、どうやって作成されたか分かりにくいので、報道機関が事前チェックする難しさを見せつけた。