小中学校で教員不足が深刻になっている。朝日、毎日、読売などの全国紙が連日報道している。病休や産休で休んだ教員の補充が追い付かないのだという。背景には、長時間勤務が常態化し、休日にも部活があるなど、学校現場の「働き方改革」の遅れがあるようだ。
「担任不在」のクラスも
朝日新聞は2023年5月9日、「新学期、全国の学校で教員不足1500人 担任不在で自習も」という記事を掲載した。
同紙は、教員人事権のある47都道府県教委と20政令指定市教委、大阪府から教員人事権を移譲された豊能地区教職員人事協議会の計68機関を対象に、今年4月時点の教員不足の状況を取材した。判明しただけで、34機関で小中高、特別支援学校のいずれかに計1494人の欠員が生じていたという。
26機関は4月時点の不足数をそもそも把握していなかったり、集計中だったりして不明で、実際の不足数はもっと多い可能性がある、と同紙は指摘している。
毎日新聞は10日、「小中学校の2割で『教員不足』 過度な負担も 教頭・副校長調査」という記事を掲載した。
これは、有識者や現役教員らでつくる団体「#教員不足をなくそう緊急アクション」が発表した調査結果をまとめたもの。それによると、公立小中学校の教頭・副校長を対象にした調査で、小中学校ともに約2割が、今年4月時点で「教員不足が起きている」と回答。中学校では、約1割が「授業が実施できない教科がある」と答えた。
担任4人交代のクラスも
読売新聞は5月6日、「激しさ増す教員奪い合い、副校長が土日返上で400人以上に電話...担任4人交代のクラスも」という現場報告記事を掲載した。
新学期が始まってまもない4月中旬、東京都内のある公立小学校。全校児童約800人、約35人の教員が配置されているこの学校では、もともと4月から女性教員2人が育休を取得することが決まっていた。
代わりを探すため、副校長は昨年11月以降、採用試験で不合格となった「待機組」と呼ばれる教員免許を持つ人や結婚、出産で退職した元教員たちに電話をかけ続けてきた。土日にも出勤して400人以上に連絡したが、今年3月までに面接までこぎ着けたのは4人だけ。だが、「自宅に近い学校から誘いがあった」「受け持ちたい学年と違う」などの理由で最終的に断られた。
結局、代わりの教員は見つからず、任期を終えて学校を離れることになっていた非正規の2人に1年の延長を頼み込んだ。1人は送別会まで終わっていたが、始業式直前にようやく受け入れてもらったという。
教育の質の低下に
朝日新聞によると、首都圏のある公立小は今年4月の始業式で、低学年の1学級の正式な担任の名前を発表できなかった。病気で休む教員らの代役が見つからなかったためだ。
「#教員不足をなくそう緊急アクション」による教頭・副校長調査では、不足への対応(複数選択可)について、小学校は「学級担任でない教員を充てた」(29.8%)、「少人数指導担当などの加配の教員を充てた」(27.8%)が多く、中学校は「免許を保有する教員がおらず、授業が実施できない教科がある」というケースも、13.1%に及んだ。
文部科学省によると、定員を満たしていない「教員不足」の公立小中学校は、2021年5月時点で1350 校、1701人。小学校の4.2%、中学校の6%にあたる。読売新聞によると、今年度についても、文科省は「同じような状況だ」としている。
雇用・労働政策研究者の今野晴貴NPO法人POSSE代表は4月29日、「Yahoo!個人」で、「教員の過重労働やそれによる教育業界の人手不足は社会問題となっている」「教員の休職や退職には歯止めがかからず、教職の不人気なども広がり、社会全体の教育の質の低下につながっている」と指摘している。