コレクションは出光美術館に
日本をこよなく愛したプライスさんは、2011年の東日本大震災には衝撃を受けた。13年には、被災地を励ましたいと、仙台、盛岡などで、若冲の巡回展を開催した。
かねてから収集品を日本の美術館に引き継ぐことを望み、19年には出光美術館(東京)が約190件を一括購入した。20年には、同館で、新たな収蔵品となった「プライス・コレクション」による特別展「江戸絵画の華」が開かれていた。
明治時代に、日本の文化財保護に努めた東洋美術史家のアーネスト・フェノロサ。日本の昔話に着目し、『怪談』のほか、多数の日本文化紹介本を残した英文学者のラフカディオ・ハーン。簡素なたたずまいの桂離宮を見て「涙が出るほど美しい」と讃えたという建築家のブルーノ・タウト。日本の民芸の発展に尽力した陶芸家のバーナード・リーチ。日本の文化や芸術を「再発見」し、価値を高めるために尽力したと称賛されている外国人は少なくないが、研究者でも専門家でもなかったプライスさんも、そうした稀有な人々の一人だった。