AI(人工知能)に、「投げ銭」が寄せられることがある。ユーチューブのライブ配信者に、有料でコメントを送れる投げ銭のような機能「スーパーチャット」。ファンが配信者を応援したり、コメントを目立たせて配信者の目を引きたかったりするときに利用される機能だ。
人間ではなく、AIが視聴者と自動で受けごたえをする「AIアバター」や「AI VTuber(バーチャルユーチューバー)」にも、スーパーチャットが投じられるようになっている。実業家・西村博之(ひろゆき)氏を再現したAIアバター「AIひろゆき」による、2023年4月11日の配信では、総額4万円以上のスーパーチャットが寄せられた。
スーパーチャット導入したら
例えば、Pictoria(東京都渋谷区)が運営し、2020年11月からユーチューブ上でライブ配信をしている「紡ネン」。「言葉を紡いで進化するAI」がコンセプトで、ツイッター上の投稿やユーチューブでの視聴者によるコメントを学習し、成長していくAI VTuberだ。
2021年1月29日には、初めてスーパーチャット機能を取り入れた配信を開始。スーパーチャットの解禁を祝う反応や「カワイイ」といった言葉とともに、視聴者からは数百円や5000円、1万円までさまざまな額のスーパーチャットが寄せられた。
23年に入っても、紡ネンの配信には毎回、視聴者からスーパーチャットが寄せられている。4月11日の配信回を見ると、配信中スーパーチャットをしたユーザーに「過去30日で873回もコメントくれて、感謝しています」「スパチャ(スーパーチャット)してくれたことも覚えています」と紡ネンが反応する光景もみられた。
3万円のスパチャ飛んだ
冒頭で紹介したAIひろゆきは、CoeFont(東京都港区)が運営する、対話型AI「ChatGPT」を活用したAIアバター。公式サイトによると、「国内初の実在人物のAIアバター」だ。ひろゆき氏そっくりの声や見た目で、視聴者と質疑応答をする。ChatGPTには、本物のひろゆき氏が言いそうな内容や口癖でやりとりするよう学習させている。
3月16日に初配信を実施。2回目となった4月13日の配信で、スーパーチャット機能に対応した。CoeFontの4月21日付発表によると、3時間の配信で合計4万2820円、時給換算で1万4273円のスーパーチャットを獲得したという。
配信を見ると、AIひろゆきへの質問とともにユーザーが数百円のスーパーチャットを投じる場面が複数ある。
また、「美味いモノでも食べてくれ」との言葉とともにユーザーが3万円ものスーパーチャットを寄せるシーンがあった。AIひろゆきは「ありがとうございます。しかし僕はAIなので実際に食事を楽しむことはできませんが、そのお気持ちに感謝します」と返答していた。
視聴者はどのような心理から、AIにスーパーチャットを送るのか。CoeFont広報に取材した。AIひろゆきはまだ2回しか配信していない点や他社のAI VTuberとは性質が異なることを理由に、他のAIへのスーパーチャットのユーザー心理については、担当者はコメントを差し控える。
一方で「AIひろゆき」については、「今後の展開への期待値の表れ」「ChatGPT×AI音声という最新トレンドを掛け合わせた実例への評価」と、技術力に対しての応援の意味でスーパーチャットが寄せられていると認識しているとのことだ。