日本の再浮上 前野隆司さんは 国単位のオールリセットに望み

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減るばかりの選択肢

   前野さんは最近、企業を対象とした「ウェルビーイングアワード 2023」のシンポジウムで、「本来はいいことをしたいという思いが(企業には)あって、それが企業ブランディングになる」と語っている。企業活動が社会の役に立ち、従業員も生き生きと働ける。株主や顧客、徴税する国もハッピー...そんな状態こそ ひとつの理想には違いない。

   しかし、世界には別の行動原理を信奉する企業もたくさんあって、というかそっちの方が多数派で、グローバルな競争では「優等生」が割を食う現実がある。ならば誠実なビジネスを消費者も応援しよう、という潮流が生まれている。

   小さくても優れた企業に人材が集まるようになれば、長い目で見て日本再生にもプラスに働く。これが前野さんの考え方だろう。

   戦争や大災害による破滅的な出直しか、新陳代謝による漸進的な内部変革か。二つから選ぶというより、自ら選べるのは後者しかない。しかも、競争力の衰退、少子高齢化、福祉や医療の負担増など、変革のマイナスとなる要素がどんどん増えており、選択肢は減るばかり。日本の残り時間は、それほどない。

冨永 格

冨永格(とみなが・ただし)
コラムニスト。1956年、静岡生まれ。朝日新聞で経済部デスク、ブリュッセル支局長、パリ支局長などを歴任、2007年から6年間「天声人語」を担当した。欧州駐在の特別編集委員を経て退職。朝日カルチャーセンター「文章教室」の監修講師を務める。趣味は料理と街歩き、スポーツカーの運転。6速MTのやんちゃロータス乗り。

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