対話型AI(人工知能)「ChatGPT」は、さまざまな質問に答えてくれる。日本文学の名作「走れメロス」も、当然「知っている」はず。
そこでChatGPTに「走れメロス」の冒頭を送り、途中から書いてもらった。同じストーリーになることを期待したら、驚くほどのトンデモ展開が待っていた。
冒頭10分の1ほどストーリーを教え込む
J-CASTトレンドでは、ChatGPTに「アスキーアート(AA)」で「ドラえもん」を再現してもらった。しかし、アウトプットは残念だった。「イラスト」という抽象的なものを再現させようとしたのが敗因かもしれない。
だが今回の題材は、インターネット電子図書館「青空文庫」にも掲載されている「走れメロス」。広く知られる、太宰治の短編小説だ。
暴君ディオニスを殺そうとした主人公のメロスは、3日後に死刑になる。しかし、メロスは妹の結婚式に行かねばならず、友のセリヌンティウスが身代わりに。3日以内に戻るとの約束を守るため、苦難を乗り越え、友の元に急ぐ。なんとか間に合ったメロスとセリヌンティウスの友情に、暴君は改心してメロスは許される――。物語のあらすじは、こうだ。
ChatGPTには、「走れメロス」の途中までだと示したうえで、「メロスは激怒した。(中略)聞いて、メロスは激怒した。『呆れた王だ。生かして置けぬ。』」と送った。王の暴虐を知ったメロスが怒りをあらわにした場面で、全体のおよそ10分の1未満に当たる分量だ。実際のストーリーではこの後、メロスが王の居城に向かい、捕らえられる。
そのうえで、続きを書くように指示を出してみた。ChatGPTは少し時間を空けてオリジナル「走れメロス」を紡ぎだした。
「老爺の話を聞いて、メロスはますます王に対する憎しみを募らせた。そして、自分が市に来た真の目的を思い出し、急いで友のセリヌンティウスの家へ向かった。 セリヌンティウスは、石工として働く傍ら、密かに反乱軍の仲間たちと情報を共有し、王に対する反乱を計画していた。メロスは友にその計画に加わり、王を倒すために何ができるかを尋ねた」
太宰版メロスの「真の目的」は、妹の結婚式に向けた花嫁衣装や祝宴の準備だ。一方、GPT版では王への反乱に変わっている。また本来セリヌンティウスが登場するのは、もっと後だ。王城でメロスが捕らえられた際に、身代わりとして登場する。そして、石工ではあるが、反乱軍の人間ではない。